一九七一年(昭和四十六年)七月二十四日 パリで作成
一九七二年(昭和四十七年)一月二十五日 日本国署名
一九七五年(昭和五十年)一月二十四日 批准書寄託
一九七五年(昭和五十年)三月六日 公布(条約第四号)
一九七五年(昭和五十年)四月二十四日 効力発生

前文 (略)

第一条 〔同盟の形成〕
この条約が適用される国は、文学的及び美術的著作物に関する著作者の権利の保護のための同盟を形成する。

第二条 〔保護を受ける著作物〕
(1) 「文学的及び美術的著作物」には、表現の方法又は形式のいかんを問わず、書籍、小冊子その他の文書、講演、演説、説教その他これらと同性質の著作物、演劇用又は楽劇用の著作物、舞踊及び無言劇の著作物、楽曲(歌詞を伴うかどうかを問わない。)、映画の著作物(映画に類似する方法で表現された著作物を含む。以下同じ。)、素描、絵画、建築、彫刻、版画及び石版画の著作物、写真の著作物(写真に類似する方法で表現された著作物を含む。以下同じ。)、応用美術の著作物、図解及び地図並びに地理学、地形学、建築学その他の科学に関する図面、略図及び模型のような文芸、学術及び美術の範囲に属するすべての製作物を含む。
(2) もつとも、文学的及び美術的著作物の全体又はその一若しくは二以上の種類について、それらの著作物が物に固定されていない限り保護されないことを定める権能は、同盟国の立法に留保される。
(3) 文学的又は美術的著作物の翻訳、翻案、編曲等による改作物は、その原作物の著作者の権利を害することなく、原著作物として保護される。
(4) 立法上、行政上及び司法上の公文書並びにその公的な翻訳物に与えられる保護は、同盟国の法令の定めるところによる。
(5) 素材の選択又は配列によつて知的創作物を形成する百科辞典及び選集のような文学的又は美術的著作物の編集物は、その編集物の部分を構成する各著作物の著作者の権利を害することなく、知的創作物として保護される。
(6) 前記の著作物は、すべての同盟国において保護を受ける。この保護は、著作者及びその承継人のために与えられる。
(7) 応用美術の著作物及び意匠に関する法令の適用範囲並びにそれらの著作物及び意匠の保護の条件は、第七条(4)の規定に従うことを条件として、同盟国の法令の定めるところによる。本国において専ら意匠として保護される著作物については、他の同盟国において、その国において意匠に与えられる特別の保護しか要求することができない。ただし、その国においてそのような特別の保護が与えられない場合には、それらの著作物は、美術的著作物として保護される。
(8) この条約の保護は、単なる報道にすぎない時事の記事又は雑報については適用されない。

第二条の二 〔口述の著作物の保護〕
(1) 政治上の演説及び裁判手続においてされた陳述につき前条に定める保護の一部又は全部を排除する権能は、同盟国の立法に留保される。
(2) 報道の目的上正当な範囲内において、公に行われた講演、演説その他これらと同性質の著作物を新聞雑誌に掲載し、放送し、有線により公に伝達し及び第十一条の二(1)に規定する公の伝達の対象とする場合の条件を定める権能も、また、同盟国の立法に留保される。
(3) もつとも、著作者は、(1)及び(2)に規定する著作物を編集物とする排他的権利を享有する。

第三条 〔保護を受ける著作者〕
(1) 次の者は、次の著作物について、この条約によつて保護される。
(a) いずれかの同盟国の国民である著作者 その著作物(発行されているかどうかを問わない。)
(b) いずれの同盟国の国民でもない著作者 その著作物のうち、いずれかの同盟国において最初に発行されたもの並びに同盟に属しない国及びいずれかの同盟国において同時に発行されたもの
(2) いずれの同盟国の国民でもない著作者でいずれかの同盟国に常居所を有するものは、この条約の適用上、その同盟国の国民である著作者とみなす。
(3) 「発行された著作物」とは、複製物の作成方法のいかんを問わず、著作者の承諾を得て刊行された著作物であつて、その性質にかんがみ公衆の合理的な要求を満たすような数量の複製物が提供されたものをいう。演劇用若しくは楽劇用の著作物又は映画の著作物の上演、音楽の著作物の演奏、文学的著作物の朗読、文学的又は美術的著作物の伝達又は放送、美術の著作物の展示及び建築の著作物の建設は、発行を意味しない。
(4) 最初の発行の国を含む二以上の国において最初の発行の日から三十日以内に発行された著作物は、それらの国において同時に発行されたものとみなす。

第四条 〔同 前〕
次の者は、前条に定める条件が満たされない場合にも、この条約によつて保護される。
(a) いずれかの同盟国に主たる事務所又は常居所を有する者が製作者である映画の著作物の著作者
(b) いずれかの同盟国において建設された建築の著作物の著作者又はいずれかの同盟国に所在する不動産と一体となつている絵画的及び彫塑的美術の著作物の著作者

第五条 〔保護の原則〕
(1) 著作者は、この条約によつて保護される著作物に関し、その著作物の本国以外の同盟国において、その国の法令が自国民に現在与えており又は将来与えることがある権利及びこの条約が特に与える権利を享有する。
(2) (1)の権利の享有及び行使には、いかなる方式の履行をも要しない。その享有及び行使は、著作物の本国における保護の存在にかかわらない。したがつて、保護の範囲及び著作者の権利を保全するため著作者に保障される救済の方法は、この条約の規定によるほか、専ら、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる。
(3) 著作物の本国における保護は、その国の法令の定めるところによる。もつとも、この条約によつて保護される著作物の著作者がその著作物の本国の国民でない場合にも、その著作者は、その著作物の本国において内国著作者と同一の権利を享有する。
(4) 次の著作物については、次の国を本国とする。
(a) いずれかの同盟国において最初に発行された著作物については、その同盟国。もつとも、異なる保護期間を認める二以上の同盟国において同時に発行された著作物については、これらの国のうち法令の許与する保護期間が最も短い国とする。
(b) 同盟に属しない国及びいずれかの同盟国において同時に発行された著作物については、その同盟国
(c) 発行されていない著作物又は同盟に属しない国において最初に発行された著作物でいずれの同盟国においても同時に発行されなかつたものについては、その著作者が国民である同盟国。ただし、次の著作物については、次の国を本国とする。
(i) いずれかの同盟国に主たる事務所又は常居所を有する者が製作者である映画の著作物については、その同盟国
(ii) いずれかの同盟国において建設された建築の著作物又はいずれかの同盟国に所在する不動産と一体となつている絵画的及び彫塑的美術の著作物については、その同盟国

第六条 〔同盟国に属しない著作者の保護の原則〕
(1) 同盟に属しない国がいずれかの同盟国の国民である著作者の著作物を十分に保護しない場合には、その同盟国は、最初の発行の時において当該同盟に属しない国の国民であつて、かつ、いずれの同盟国にも常居所を有していない著作者の著作物の保護を制限することができる。最初の発行の国がこの権能を行使する場合には、他の同盟国は、そのように特殊な取扱いを受ける著作物に対し、最初の発行の国において与えられる保護よりも厚い保護を与えることを要しない。
(2) (1)の規定に基づく制限は、その実施前にいずれかの同盟国において発行された著作物についてその著作者が既に取得した権利に影響を及ぼすものであつてはならない。
(3) この条の規定に基づいて著作者の権利の保護を制限する同盟国は、その旨を、その保護の制限の対象となる国及びその国民である著作者の権利に対する制限を明記した宣言書により、世界知的所有権機関事務局長(以下「事務局長」という。)に通告する。事務局長は、その宣言をすべての同盟国に直ちに通報する。

第六条の二 〔著作者人格権〕
(1) 著作者は、その財産的権利とは別個に、この権利が移転された後においても、著作物の創作者であることを主張する権利及び著作物の変更、切除その他の改変又は著作物に対するその他の侵害で自己の名誉又は声望を害するおそれのあるものに対して異議を申し立てる権利を保有する。
(2) (1)の規定に基づいて著作者に認められる権利は、著作者の死後においても、少なくとも財産的権利が消滅するまで存続し、保護が要求される国の法令により資格を与えられる人又は団体によつて行使される。もつとも、この改正条約の批准又はこれへの加入の時に効力を有する法令において、(1)の規定に基づいて認められる権利のすべてについて著作者の死後における保護を確保することを定めていない国は、それらの権利のうち一部の権利が著作者の死後は存続しないことを定める権能を有する。
(3) この条において認められる権利を保全するための救済の方法は、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる。

第七条 〔保護期間〕
(1) この条約によつて許与される保護期間は、著作者の生存の間及びその死後五十年とする。
(2) もつとも、同盟国は、映画の著作物については、保護期間が、著作者の承諾を得て著作物が公衆に提供された時から五十年で、又は、著作物がその製作の時から五十年以内に著作者の承諾を得て公衆に提供されないときは、製作の時から五十年で満了することを定める権能を有する。
(3) 無名又は変名の著作物については、この条約によつて許与される保護期間は、著作物が適法に公衆に提供された時から五十年で満了する。ただし、著作者の用いた変名がその著作者を示すことについて疑いがない場合には、保護期間は、(1)に定める保護期間とする。無名又は変名の著作物の著作者が第一文の期間内にその著作物の著作者であることを明らかにする場合には、適用される保護期間は、(1)に定める保護期間とする。同盟国は、著作者が五十年前に死亡していると推定する十分な理由のある無名又は変名の著作物を保護することを要しない。
(4) 写真の著作物及び美術的著作物として保護される応用美術の著作物の保護期間を定める権能は、同盟国の立法に留保される。ただし、その保護期間は、それらの著作物の製作の時から二十五年よりも短くてはならない。
(5) 著作者の死後の保護期間及び(2)から(4)までに定める保護期間は、著作者の死亡の時又は(2)から(4)までに規定する事実が発生した時から始まる。ただし、これらの保護期間は、死亡の年又はそれらの事実が発生した年の翌年の一月一日から計算する。
(6) 同盟国は、前記の保護期間よりも長い保護期間を許与する権能を有する。
(7) この条約のローマ改正条約に拘束される同盟国であつて、この改正条約の署名の時に効力を有する国内法令において前記の保護期間よりも短い保護期間を許与するものは、この改正条約に加入し又はこれを批准する場合にも、それらの保護期間を維持する権能を有する。
(8) いずれの場合にも、保護期間は、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる。ただし、その国の法令に別段の定めがない限り、保護期間は、著作物の本国において定められる保護期間を超えることはない。

第七条の二 〔共同著作物の保護期間〕
前条の規定は、著作権が著作物の共同著作者の共有に属する場合にも適用する。ただし、著作者の死亡の時から計算する期間は、共同著作者のうちの最後の生存者の死亡の時から計算する。

第八条 〔翻訳権〕
文学的及び美術的著作物の著作者でこの条約によつて保護されるものは、その著作物に関する権利の存続期間中、その著作物を翻訳し又はその翻訳を許諾する排他的権利を享有する。

第九条 〔複製権〕
(1) 文学的及び美術的著作物の著作者でこの条約によつて保護されるものは、それらの著作物の複製(その方法及び形式のいかんを問わない。)を許諾する排他的権利を享有する。
(2) 特別の場合について(1)の著作物の複製を認める権能は、同盟国の立法に留保される。ただし、そのような複製が当該著作物の通常の利用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件とする。
(3) 録音及び録画は、この条約の適用上、複製とみなす。

第十条 〔引 用〕
(1) 既に適法に公衆に提供された著作物からの引用(新聞雑誌の要約の形で行う新聞紙及び定期刊行物の記事からの引用を含む。)は、その引用が公正な慣行に合致し、かつ、その目的上正当な範囲内で行われることを条件として、適法とされる。
(2) 文学的又は美術的著作物を、授業用に、出版、放送、録音又は録画の方法でその目的上正当な範囲内において適法に利用することについては、同盟国の法令又は同盟国間の現行の若しくは将来締結される特別の取極の定めるところによる。ただし、そのような利用は、公正な慣行に合致するものでなければならない。
(3) (1)及び(2)に規定する引用及び利用を行うに際しては、出所(著作者名が表示されているときは、これを含む。)を明示する。

第十条の二 〔時事問題の記事の複製等〕
(1) 新聞紙若しくは定期刊行物において公表された経済上、政治上若しくは宗教上の時事問題を論議する記事又はこれと同性質の放送された著作物を新聞雑誌に掲載し、放送し又は有線により公に伝達することを、そのような掲載、放送又は伝達が明示的に禁止されていない場合に認める権能は、同盟国の立法に留保される。ただし、その出所は、常に明示しなければならない。この義務の違反に対する制裁は、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる。
(2) 写真、映画、放送又は有線による公の伝達により時事の事件を報道する際に、その事件の過程において見られ又は聞かれる文学的又は美術的著作物を報道の目的上正当な範囲内で複製し及び公衆に提供する場合の条件についても、同盟国の法令の定めるところによる。

第十一条 〔上演権・演奏権等〕
(1) 演劇用又は楽劇用の著作物及び音楽の著作物の著作者は、次のことを許諾する排他的権利を享有する。
(i) 著作物を公に上演し及び演奏すること(その手段又は方法のいかんを問わない。)。
(ii) 著作物の上演及び演奏を何らかの手段により公に伝達すること。
(2) 演劇用又は楽劇用の著作物の著作者は、その著作物に関する権利の存続期間中、その著作物の翻訳物についても、(1)の権利を享有する。

第十一条の二 〔放送権等〕
(1) 文学的及び美術的著作物の著作者は、次のことを許諾する排他的権利を享有する。
(i) 著作物を放送すること又は記号、音若しくは影像を無線で送るその他の手段により著作物を公に伝達すること。
(ii) 放送された著作物を原放送機関以外の機関が有線又は無線で公に伝達すること。
(iii) 放送された著作物を拡声機又は記号、音若しくは影像を伝えるその他の類似の器具を用いて公に伝達すること。
(2) (1)に定める権利を行使する条件は、同盟国の法令の定めるところによる。ただし、その条件は、これを定めた国においてのみ効力を有する。その条件は、著作者の人格権を害するものであつてはならず、また、協議が成立しないときに権限のある機関が定める公正な補償金を受ける著作者の権利を害するものであつてはならない。
(3) (1)の規定に基づいて与えられた許諾には、別段の定めがない限り、放送される著作物を音又は影像を固定する器具を用いて記録することの許諾を含まない。もつとも、放送機関が自己の手段により自己の放送のために行う一時的記録の制度は、同盟国の法令の定めるところによる。当該法令は、その一時的記録が資料として特別の性質を有することを理由として、これを公的な記録保存所に保存することを認めることができる。

第十一条の三 〔朗読権等〕
(1) 文学的著作物の著作者は、次のことを許諾する排他的権利を享有する。
(i) 著作物を公に朗読すること(その手段又は方法のいかんを問わない。)。
(ii) 著作物の朗読を何らかの手段により公に伝達すること。
(2) 文学的著作物の著作者は、その著作物に関する権利の存続期間中、その著作物の翻訳物についても、(1)の権利を享有する。

第十二条 〔翻案権・編曲権等〕
文学的又は美術的著作物の著作者は、その著作物の翻案、編曲その他の改作を許諾する排他的権利を享有する。

第十三条 〔録音権に関する留保等〕
(1) 各同盟国は、自国に関する限り、音楽の著作物の著作者又は音楽の著作物とともにその歌詞を録音することを既に許諾している歌詞の著作者が、その音楽の著作物を録音すること又はその歌詞を当該音楽の著作物とともに録音することを許諾する排他的権利に関し、留保及び条件を定めることができる。ただし、その留保及び条件は、これを定めた国においてのみ効力を有する。その留保及び条件は、協議が成立しないときに権限のある機関が定める公正な補償金を受ける著作者の権利を害するものであつてはならない。
(2) 音楽の著作物の録音物であつて、千九百二十八年六月二日にローマで署名された条約及び千九百四十八年六月二十六日にブラッセルで署名された条約の第十三条(3)の規定に基づきいずれかの同盟国において作成されたものは、その国がこの改正条約に拘束されることとなつた日から二年の期間が満了するまでは、その音楽の著作物の著作者の承諾を得ることなくその国において複製することができる。
(3) (1)及び(2)の規定に基づいて作成された録音物であつて、そのような録音が適法とされない同盟国に利害関係人の許諾を得ないで輸入されたものは、差し押さえることができる。

第十四条 〔映画化権・上映権〕
(1) 文学的又は美術的著作物の著作者は、次のことを許諾する排他的権利を享有する。
(i) 著作物を映画として翻案し及び複製すること並びにこのように翻案され又は複製された著作物を頒布すること。
(ii) このように翻案され又は複製された著作物を公に上演し及び演奏し並びに有線により公に伝達すること。
(2) 文学的又は美術的著作物を原作とする映画の作品を他の美術形式に翻案することは、その映画の作品の著作者の許諾の権利を害することなく、原作物の著作者の許諾を必要とする。
(3) 前条(1)の規定は、適用されない。

第十四条の二 〔映画の著作物の著作権者の権利〕
(1) 映画の著作物は、翻案され又は複製された著作物の著作者の権利を害することなく、原著作物として保護されるものとし、映画の著作物について著作権を有する者は、原著作物の著作者と同一の権利(前条に定める権利を含む。)を享有する。
(2) (a) 映画の著作物について著作権を有する者を決定することは、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる。
(b) もつとも、法令が映画の著作物の製作に寄与した著作者を映画の著作物について著作権を有する者と認める同盟国においては、それらの著作者は、そのような寄与をすることを約束したときは、反対の又は特別の定めがない限り、その映画の著作物を複製し、頒布し、公に上演し及び演奏し、有線で公に伝達し、放送し、他の方法で公衆に伝達し並びに字幕を挿入し及び吹替えをすることに反対することができない。
(c) (b)に規定する約束の形式が(b)の規定の適用上書面による契約(これに相当する文書を含む。)によるべきかどうかの問題は、映画の著作物の製作者が主たる事務所又は常居所を有する同盟国の法令によつて決定される。もつとも、その約束が書面による契約(これに相当する文書を含む。)によるべきことを定める権能は、保護が要求される同盟国の立法に留保される。この権能を行使する同盟国は、その旨を宣言書により事務局長に通告するものとし、事務局長は、これを他のすべての同盟国に直ちに通報する。
(d) 「反対の又は特別の定め」とは、(b)に規定する約束に付されたすべての制限的条件をいう。
(3) (2)(b)の規定は、国内法令に別段の定めがない限り、映画の著作物の製作のために創作された脚本、せりふ及び音楽の著作物の著作者並びに映画の著作物の主たる制作者(※)については、適用しない。その法令において(2)(b)の規定をその主たる制作者(※)について適用することを定めていない同盟国は、その旨を宣言書により事務局長に通告するものとし、事務局長は、これを他のすべての同盟国に直ちに通報する。

※注 「主たる制作者」とは、条約の原文にあるフランス語 realisateur principal(英語ではprincipal director)の訳語であり、通常の場合、劇場用映画にあつては「監督」を担当し、テレビ用映画にあつては「演出」を担当して、映画の著作物の創作の中心的存在となつた者を意味する。

第十四条の三 〔追及権〕
(1) 美術の著作物の原作品並びに作家及び作曲家の原稿については、その著作者(その死後においては、国内法令が資格を与える人又は団体)は、著作者が最初にその原作品及び原稿を譲渡した後に行われるその原作品及び原稿の売買の利益にあずかる譲渡不能の権利を享有する。
(2) (1)に定める保護は、著作者が国民である国の法令がこの保護を認める場合に限り、かつ、この保護が要求される国の法令が認める範囲内でのみ、各同盟国において要求することができる。
(3) 徴収の方法及び額は、各同盟国の法令の定めるところによる。

第十五条 〔著作者の推定〕
(1) この条約によつて保護される文学的及び美術的著作物の著作者が、反証のない限り当該著作物の著作者と認められ、したがつて、その権利を侵害する者に対し同盟国の裁判所に訴えを提起することを認められるためには、その名が通常の方法により当該著作物に表示されていることで足りる。この(1)の規定は、著作者の用いた名が変名であつても、それがその著作者を示すことについて疑いがない限り、適用される。
(2) 映画の著作物に通常の方法によりその名を表示されている自然人又は法人は、反証のない限りその映画の著作物の製作者と推定される。
(3) 無名の著作物及び(1)に規定する変名の著作物以外の変名の著作物については、著作物にその名を表示されている発行者は、反証のない限り著作者を代表するものと認められ、この資格において、著作者の権利を保全し及び行使することができる。この(3)の規定は、著作者がその著作物の著作者であることを明らかにしてその資格を証明した時から、適用されなくなる。
(4) (a) 著作者が明らかでないが、著作者がいずれか一の同盟国の国民であると推定する十分な理由がある発行されていない著作物について、著作者を代表し並びに著作者の権利を各同盟国において保全し及び行使することを認められる権限のある機関を指定する権能は、当該一の同盟国の立法に留保される。
(b) (a)の規定に基づいて指定を行う同盟国は、指定された機関についてすべての情報を記載した宣言書によりその旨を事務局長に通告するものとし、事務局長は、その宣言を他のすべての同盟国に直ちに通報する。

第十六条 〔著作権侵害物の差押え〕
(1) 著作者の権利を侵害するすべての製作物は、当該著作物が法律上の保護を受ける同盟国において差し押さえることができる。
(2) (1)の規定は、当該著作物が保護を受けない国又は受けなくなつた国において作成された複製物についても適用する。
(3) 差押えは、各同盟国の法令に従つて行う。

第十七条 〔同盟国の警察権〕
この条約は、法令又は諸規程により、権限のある機関が必要と認める場合に、著作物又は製作物の頒布、上演又は展示を許可し、取り締まり又は禁止することとする各同盟国政府の権能を何ら害するものではない。

第十八条 〔遡及効〕
(1) この条約は、その効力発生の時に本国において保護期間の満了により既に公共のものとなつた著作物以外のすべての著作物について適用される。
(2) もつとも、従来認められていた保護期間の満了により保護が要求される同盟国において公共のものとなつた著作物は、その国において新たに保護されることはない。
(3) 前記の原則の適用は、これに関する同盟国間の現行の又は将来締結される特別の条約の規定に従う。このような規定がない場合には、各国は、自国に関し、この原則の適用に関する方法を定める。
(4) (1)から(3)までの規定は、同盟への新たな加盟の場合及び保護が第七条の規定の適用により又は留保の放棄によつて拡張される場合にも適用される。

第十九条 〔条約と国内法との関係〕
この条約は、同盟国の法令が定める一層寛大な規定の適用を求めることを妨げるものではない。

第二十条 〔特別な取極〕
同盟国政府は、相互間で特別の取極を行う権利を留保する。ただし、その取極は、この条約が許与する権利よりも広い権利を著作者に与えるもの又はこの条約の規定に抵触する規定を有しないものでなければならない。この条件を満たす現行の取極の規定は、引き続き適用される。

第二十一条 〔開発途上国に関する特別規定〕
(1) 開発途上にある国に関する特別の規定は、附属書に定める。
(2) 附属書は、第二十八条(1)(b)の規定に従うことを条件として、この改正条約の不可分の一部をなす。

第二十二条
(1) (a) 同盟は、この条から第二十六条までの規定に拘束される同盟国で構成する総会を有する。
(b) 各同盟国の政府は、一人の代表によつて代表されるものとし、代表は、代表代理、顧問及び専門家の補佐を受けることができる。
(c) 各代表団の費用は、その代表団を任命した政府が負担する。
(2) (a) 総会は、次のことを行う。
(i) 同盟の維持及び発展並びにこの条約の実施に関するすべての問題を取り扱うこと。
(ii) 世界知的所有権機関(以下「機関」という。)を設立する条約に規定する知的所有権国際事務局(以下「国際事務局」という。)に対し、改正会議の準備に関する指示を与えること。
ただし、この条から第二十六条までの規定に拘束されない同盟国の意見を十分に考慮するものとする。
(iii) 機関の事務局長の同盟に関する報告及び活動を検討し及び承認し、並びに機関の事務局長に対し同盟の権限内の事項についてすべての必要な指示を与えること。
(iv) 総会の執行委員会の構成国を選出すること。
(v) 執行委員会の報告及び活動を検討し及び承認し、並びに執行委員会に対し指示を与えること。
(vi) 同盟の事業計画を決定し及び二年予算を採択し、並びに決算を承認すること。
(vii) 同盟の財政規則を採択すること。
(viii) 同盟の目的を達成するために必要と認める専門家委員会及び作業部会を設置すること。
(ix) 同盟の構成国でない国並びに政府間機関及び国際的な非政府機関で総会の会合にオブザーバーとして出席することを認められるものを決定すること。
(x) この条から第二十六条までの規定の修正を採択すること。
(xi) 同盟の目的を達成するため、他の適当な措置をとること。
(xii) その他この条約に基づく任務を遂行すること。
(xiii) 機関を設立する条約によつて総会を与えられる権利(総会が受諾するものに限る。)を行使すること。
(b) 総会は、機関が管理業務を行つている他の同盟にも利害関係のある事項については、機関の調整委員会の助言を受けた上で決定を行う。
(3) (a) 総会の各構成国は、一の票を有する。
(b) 総会の構成国の二分の一をもつて定足数とする。
(c) 総会は、(b)の規定にかかわらず、いずれの会期においても、代表を出した国の数が総会の構成国の二分の一に満たないが三分の一以上である場合には、決定を行うことができる。ただし、その決定は、総会の手続に関する決定を除くほか、次の条件が満たされた場合にのみ効力を生ずる。すなわち、国際事務局は、代表を出さなかつた総会の構成国に対し、その決定を通知し、その通知の日から三箇月の期間内に賛否又は棄権を書面によつて表明するよう要請する。その期間の満了の時に、賛否又は棄権を表明した国の数が当該会期の定足数の不足を満たすこととなり、かつ、必要とされる多数の賛成がなお存在する場合には、その決定は、効力を生ずる。
(d) 第二十六条(2)の規定が適用される場合を除くほか、総会の決定は、投じられた票の三分の二以上の多数による議決で行われる。
(e) 棄権は、投票とみなさない。
(f) 代表は、一の国のみ代表し、その国の名においてのみ投票することができる。
(g) 総会の構成国でない同盟国は、総会の会合にオブザーバーとして出席することを認められる。
(4) (a) 総会は、事務局の招集により、二年ごとに一回、通常会期として会合するものとし、例外的な場合を除くほか、機関の一般総会と同一期間中に同一の場所において会合する。
(b) 総会は、執行委員会の要請又は総会の構成国の四分の一以上の要請があつたときは、事務局長の招集により、臨時会期として会合する。
(5) 総会は、その手続規則を採択する。
(昭六〇外告一八三・一部改正)

第二十三条
(1) 総会は、執行委員会を有する。
(2) (a) 執行委員会は、総会の構成国の中から総会によつて選出された国で構成する。更に、その領域内に機関の本部が所在する国は、第二十五条(7)(b)の規定が適用される場合を除くほか、当然に執行委員会に議席を有する。
(b) 執行委員会の各構成国の政府は、一人の代表によつて代表されるものとし、代表は、代表代理、顧問及び専門家の補佐を受けることができる。
(c) 各代表団の費用は、その代表団を任命した政府が負担する。
(3) 執行委員会の構成国の数は、総会の構成国の数の四分の一とする。議席の数の決定に当たつては、四で除した余りの数は、考慮に入れない。
(4) 総会は、執行委員会の構成国の選出に当たり、衡平な地理的配分を考慮し、また、同盟に関連して作成される特別の取極の締約国が執行委員会の構成国となることの必要性を考慮する。
(5) (a) 執行委員会の構成国の任期は、その選出が行われた総会の会期の終了時から総会の次の通常会期の終了時までとする。
(b) 執行委員会の構成国は、最大限その構成国の三分の二まで再選されることができる。
(c) 総会は、執行委員会の構成国の選出及び再選に関する規則を定める。
(6) (a) 執行委員会は、次のことを行う。

(i) 総会の議事日程案を作成すること。
(ii) 事務局長が作成した同盟の事業計画案及び二年予算案について総会に提案すること。
(iii) 削除
(iv) 事務局長の定期報告及び年次会計検査報告を、適当な意見を付して、総会に提出すること。
(v) 総会の決定に従い、また、総会の通常会期から通常会期までの間に生ずる事態を考慮して、事務局長による同盟の事業計画の実施を確保するためすべての必要な措置をとること。
(vi) その他この条約に基づいて執行委員会に与えられる任務を遂行すること。
(b) 執行委員会は、機関が管理業務を行つている他の同盟にも利害関係のある事項については、機関の調整委員会の助言を受けた上で決定を行う。
(7) (a) 執行委員会は、事務局長の招集により、毎年一回、通常会期として会合するものとし、できる限り機関の調整委員会と同一期間中に同一の場所において会合する。
(b) 執行委員会は、事務局長の発意により又は執行委員会の議長若しくはその構成国の四分の一以上の要請に基づき、事務局長の招集により、臨時会期として会合する。
(8) (a) 執行委員会の各構成国は、一の票を有する。
(b) 執行委員会の構成国の二分の一をもつて定足数とする。
(c) 決定は、投じられた票の単純多数による議決で行われる。
(d) 棄権は、投票とみなさない。
(e) 代表は、一の国のみを代表し、その国の名においてのみ投票することができる。
(9) 執行委員会の構成国でない同盟国は、執行委員会の会合にオブザーバーとして出席することを認められる。
(10) 執行委員会は、その手続規則を採択する。
(昭六〇外告一八三・一部改正)

第二十四条
(1) (a) 同盟の管理業務は、工業所有権の保護に関する国際条約によつて設立された同盟事務局と合同した同盟事務局の継続である国際事務局が行う。
(b) 国際事務局は、特に、同盟の諸内部機関の事務局の職務を行う。
(c) 機関の事務局長は、同盟の首席行政官であり、同盟を代表する。
(2) 国際事務局は、著作権の権利の保護に関する情報を収集し及び公表する。各同盟国は、著作者の権利の保護に関するすべての新たな法令及び公文書をできる限り速やかに国際事務局に送付する。
(3) 国際事務局は、月刊の定期刊行物を発行する。
(4) 国際事務局は、同盟国に対し、その要請に応じ、著作者の権利の保護に関する問題についての情報を提供する。
(5) 国際事務局は、著作者の権利の保護を促進するため、研究を行い及び役務を提供する。
(6) 事務局長及びその指名する職員は、総会、執行委員会その他専門家委員会又は作業部会のすべての会合に投票権なしで参加する。事務局長又はその指名する職員は、当然にこれらの内部機関の事務局の職務を行う。
(7) (a) 国際事務局は、総会の指示に従い、かつ、執行委員会と協力して、この条約(第二十二条から第二十六条までの規定を除く。)の改正会議の準備を行う。
(b) 国際事務局は、改正会議の準備に関し政府間機関及び国際的な非政府機関と協議することができる。
(c) 事務局長及びその指名する者は、改正会議における審議に投票権なしで参加する。
(8) 国際事務局は、その他国際事務局に与えられる任務を遂行する。

第二十五条
(1) (a) 同盟は、予算を有する。
(b) 同盟の予算は、収入並びに同盟に固有の支出、諸同盟の共通経費の予算に対する同盟の分担金及び場合により機関の締約国会議の予算に対する拠出金から成る。
(c) 諸同盟の共通経費とは、同盟にのみでなく機関が管理業務を行つている一又は二以上の他の同盟にも帰すべき経費をいう。共通経費についての分担の割合は、共通経費が同盟にもたらす利益に比例する。
(2) 同盟の予算は、機関が管理業務を行つている他の同盟の予算との調整の必要性を考慮した上で決定する。
(3) 同盟の予算は、次のものを財源とする。
(i) 同盟国の分担金
(ii) 国際事務局が同盟の名において提供する役務について支払われる料金
(iii) 同盟に関する国際事務局の刊行物の販売代金及びこれらの刊行物に係る権利の使用料
(iv) 贈与、遺贈及び補助金
(v) 賃貸料、利子その他の雑収入
(4) (a) 各同盟国は、予算に対する自国の分担額の決定上、次のいずれかの等級に属するものとし、次に定める単位数に基づいて年次分担金を支払う。
等級I
二五
等級II 二〇
等級III 一五
等級IV 一〇
等級V 五
等級VI 三
等級VII 一
(b) 各国は、既に指定している場合を除くほか、批准書又は加入書を寄託する際に、自国が属することを欲する等級を指定する。いずれの国も、その等級を変更することができる。一層低い等級を選択する国は、その旨を総会に対しその通常会期において表明しなければならない。その変更は、その会期の年の翌年の初めに効力を生ずる。
(c) 各同盟国の年次分担金の額は、その額とすべての同盟国の同盟の予算への年次分担金の総額との比率が、その国の属する等級の単位数とすべての同盟国の単位数の総数との比率に等しくなるような額とする。
(d) 分担金は、毎年一月一日に支払の義務が生ずる
(e) 分担金の支払が延滞している同盟国は、その未払の額が当該年度に先立つ二年度においてその国について支払の義務の生じた分担金の額以上のものとなつたときは、同盟の内部機関で自国が構成国であるものにおいて、投票権を行使することができない。ただし、その内部機関は、支払の延滞が例外的なかつ避けることのできない事情によるものであると認める限り、その国がその内部機関において引き続き投票権を行使することを許すことができる。
(f) 予算が新会計年度の開始前に採択されなかつた場合には、財政規則の定めるところにより、前年度の予算をもつて予算とする。
(5) 国際事務局が同盟の名において提供する役務について支払われる料金の額は、事務局長が定めるものとし、事務局長は、それを総会及び執行委員会に報告する。
(6) (a) 同盟は、各同盟国の一回限りの支払金から成る運転資金を有する。運転資金が十分でなくなつた場合には、総会がその増額を決定する。
(b) 運転資金に対する各同盟国の当初の支払金の額及び運転資金の増額の部分に対する各同盟国の分担額は、運転資金が設けられ又はその増額が決定された年のその国の分担金に比例する。
(c) (b)の比率及び支払の条件は、総会が、事務局長の提案に基づきかつ機関の調整委員会の助言を受けた上で定める。
(7) (a) その領域内に機関の本部が所在する国との間で締結される本部協定には、運転資金が十分でない場合にその国が立替えをすることを定める。立替えの額及び条件は、その国と機関との間の別個の取極によつてその都度定める。その国は、立替えの義務を有する限り、当然に執行委員会に議席を有する。
(b) (a)の国及び機関は、それぞれ、書面による通告により立替えをする約束を廃棄する権利を有する。廃棄は、通告が行われた年の終わりから三年を経過した時に効力を生ずる。
(8) 会計検査は、財政規則の定めるところにより、一若しくは二以上の同盟国又は外部の会計検査専門家が行う。これらの同盟国又は会計検査専門家は、総会がこれらの同盟国又は会計検査専門家の同意を得て指定する。

第二十六条
(1) 第二十二条からこの条までの規定の修正の提案は、総会の構成国、執行委員会又は事務局長が行うことができる。その提案は、遅くとも総会による審議の六箇月前までに、事務局長が総会の構成国に送付する。
(2) (1)の諸条の修正は、総会が採択する。採択には、投じられた票の四分の三以上の多数による議決を必要とする。ただし、第二十二条及びこの(2)の規定の修正には、投じられた票の五分の四以上の多数による議決を必要とする。
(3) (1)の諸条の修正は、その修正が採択された時に総会の構成国であつた国の四分の三から、それぞれの憲法上の手続きに従つて行われた受諾についての書面による通告を事務局長が受領した後一箇月で効力を生ずる。このようにして受諾された(1)の諸条の修正は、その修正が効力を生ずる時に総会の構成国であるすべての国及びその後に総会の構成国となるすべての国を拘束する。ただし、同盟国の財政上の義務を増大する修正は、その修正の受諾を通告した国のみを拘束する。

第二十七条
(1) この条約は、同盟の制度を完全なものにするような改善を加えるため、改正に付される。
(2) このため、順次にいずれかの同盟国において、同盟国の代表の間で会議を行う。
(3) 第二十二条から前条までの規定の修正についての前条の規定が適用される場合を除くほか、この改正条約(附属書を含む。)の改正には、投じられた票のすべての賛成を必要とする。

第二十八条
(1) (a) 各同盟国は、この改正条約に署名している場合にはこれを批准することができるものとし、署名していない場合にはこれに加入することができる。批准書及び加入書は、事務局長に寄託する。
(b) 各同盟国は、その批准書又は加入書において、批准又は加入の効果が第一条から第二十一条までの規定及び附属書には及ばないことを宣言することができる。もつとも、附属書第六条(1)の規定に基づく宣言を既に行つている同盟国は、その批准書又は加入書において、批准又は加入の効果が第一条から第二十条までの規定に及ばないことのみを宣言することができる。
(c) (b)の規定に従い(b)にいう規定及び附属書について批准又は加入の効果を排除した各同盟国は、その後いつでも、批准又は加入の効果をそれらの規定及び附属書に及ぼすことを宣言することができる。その宣言は、事務局長に寄託する。
(2) (a) 第一条から第二十一条までの規定及び附属書は、次の二の条件が満たされた後三箇月で効力を生ずる。
(i) 少なくとも五の同盟国が、(1)(b)の規定に基づく宣言を行うことなくこの改正条約を批准し又はこれに加入すること。
(ii) スペイン、アメリカ合衆国、フランス及びグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国が、千九百七十一年七月二十四日にパリで改正された万国著作権条約に拘束されること。
(b) (a)に規定する効力発生は、遅くともその効力発生の三箇月前までに(1)(b)の規定に基づく宣言を付さない批准書又は加入書を寄託した同盟国について効果を有する。
(c) 第一条から第二十一条までの規定及び附属書は、(b)の規定が適用されない同盟国で(1)(b)の規定に基づく宣言を行うことなくこの改正条約を批准し又は加入するものについては、事務局長がその批准書又は加入書の寄託を通告した日の後三箇月で効力を生ずる。ただし、それよりも遅い日が寄託された批准書又は加入書において指定されている場合には、第一条から第二十一条までの規定及び附属書は、その国について、そのように指定された日に効力を生ずる。
(d) (a)から(c)までの規定は、附属書第六条の規定の適用に影響を及ぼすものではない。
(3) 第二十二条から第三十八条までの規定は、この改正条約を批准し又はこれに加入する同盟国((1)(b)の規定に基づく宣言を行つたかどうかを問わない。)については、事務局長がその批准書又は加入書の寄託を通告した日の後三箇月で効力を生ずる。ただし、それよりも遅い日が寄託された批准書又は加入書において指定されている場合には、第二十二条から第三十八条までの規定は、その国について、そのように指定された日に効力を生ずる。

第二十九条
(1) 同盟に属しないいずれの国も、この改正条約に加入することができるものとし、その加入により、この条約の締約国となり、同盟の構成国となることができる。加入書は、事務局長に寄託する。
(2) (a) この条約は、同盟に属しないいずれの国についても、(b)の規定に従うことを条件として、事務局長がその加入書の寄託を通告した日の後三箇月で効力が生ずる。ただし、それよりも遅い日が寄託された加入書において指定されている場合には、この条約は、その国について、そのように指定された日に効力を生ずる。
(b) (a)の規定による効力発生が前条(2)(a)の規定による第一条から第二十一条までの規定及び附属書の効力の発生に先立つ場合には、(a)にいう国は、その間は、第一条から第二十一条までの規定及び附属書に代えて、この条約のブラッセル改正条約第一条から第二十条までの規定に拘束される。

第二十九条の二
この条約のストックホルム改正条約第二十二条から第三十八条までの規定に拘束されない国によるこの改正条約の批准又はこれへの加入は、機関を設立する条約第十四条(2)の規定の適用上、ストックホルム改正条約第二十八条(1)(b)(i)に定める制限を付した同改正条約の批准又はそれへの加入とみなされる。

第三十条
(1) 批准又は加入は、(2)、第二十八条(1)(b)及び第三十三条(2)の規定並びに附属書に基づく例外が適用される場合を除くほか、当然に、この条約のすべての条項の受諾及びこの条約に定めるすべての利益の享受を伴う。
(2) (a) この改正条約を批准し又はこれに加入する同盟国は、附属書第五条(2)の規定に従うことを条件として、従前の留保の利益を維持することができる。ただし、批准書又は加入書の寄託の時にその旨の宣言を行うことを条件とする。
(b) 同盟に属しないいずれの国も、この条約に加入する際に、附属書第五条(2)の規定に従うことを条件として、当分の間は翻訳権に関する第八条の規定に代えて、千八百九十六年にパリで補足された千八百八十六年の同盟条約第五条の規定を適用する意図を有することを宣言することができるものとし、この場合において、同条約第五条の規定は、その国において一般に使用されている言語への翻訳についてのみ適用されるものと当然に了解される。いずれの同盟国も、附属書第一条(6)(b)の規定に従うことを条件として、このような留保を行う国を本国とする著作物の翻訳権に関し、その留保を行う国が与える保護と同等の保護を与える機能を有する。
(c) いずれの同盟国も、事務局長にあてた通告により、このような留保をいつでも撤回することができる。

第三十一条
(1) いずれの国も、自国の対外関係について責任を有する領域の全部又は一部についてこの条約を適用する旨を、当該領域を指定して、批准書若しくは加入書において宣言し又は、その後いつでも、書面により事務局長に通告することができる。
(2) (1)の宣言又は通告を行つた国は、当該領域の全部又は一部についてこの条約が適用されなくなる旨を、事務局長にいつでも通告することができる。
(3) (a) (1)の規定に基づいて行われた宣言は、その宣言を付した批准又は加入と同一の日に効力を生ずるものとし、(1)の規定に基づいて行われた通告は、事務局長によるその通報の後三箇月で効力を生ずる。
(b) (2)の規定に基づいて行われた通告は、事務局長によるその受領の後十二箇月で効力を生ずる。
(4) この条の規定は、いずれかの同盟国が(1)の規定に基づく宣言を行うことによつてこの条約を適用する領域の事実上の状態を、他の同盟国が承認し又は黙示的に容認することを意味するものと解してはならない。

第三十二条
(1) この改正条約は、同盟国相互の関係においては、それが適用される範囲において、千八百八十六年九月九日のベルヌ条約及びその後の改正条約に代わる。従来実施されていた諸条約は、この改正条約を批准せず又はこれに加入しない同盟国との関係においては、全面的に又はこの改正条約が第一文の規定に基づいてそれらの条約に代わる範囲を除き、引き続き適用される。
(2) 同盟に属しない国でこの改正条約の締約国となるものは、(3)の規定に従うことを条件として、この改正条約に拘束されない同盟国又はこの改正条約に拘束されるが第二十八条(1)(b)の規定に基づく宣言を行つた同盟国との関係において、この改正条約を適用するものとし、自国との関係において次のことを認める。
(i) 当該同盟国が、その拘束される最新の改正条約を適用すること。
(ii) 当該同盟国が、附属書第一条(6)の規定に従うことを条件として、保護をこの改正条約に規定する水準に適合させる権能を有すること。
(3) 附属書に定める権能のいずれかを利用した同盟国は、この改正条約に拘束されない他の同盟国との関係において、その利用した権能に関する附属書の規定を適用することができる。ただし、当該他の同盟国がその規定の適用を受諾していることを条件とする。

第三十三条
(1) この条約の解釈又は適用に関する二以上の同盟国の間の紛争で交渉によつて解決されないものは、紛争当事国が他の解決方法について合意する場合を除くほか、いずれか一の紛争当事国が、国際司法裁判所規程に合致した請求を行うことにより、国際司法裁判所に付託することができる。紛争を国際司法裁判所に付託する国は、その旨を国際事務局に通報するものとし、国際事務局は、それを他の同盟国に通報する。
(2) いずれの国も、この改正条約に署名し又は批准書若しくは加入書を寄託する際に、(1)の規定に拘束されないことを宣言することができる。(1)の規定は、その宣言を行つた国と他の同盟国との間の紛争については、適用されない。
(3) (2)の規定に基づく宣言を行つた国は、事務局長にあてた通告により、その宣言をいつでも撤回することができる。

第三十四条
(1) いずれの国も、第二十九条の二の規定が適用される場合を除くほか、第一条から第二十一条までの規定及び附属書が効力を生じた後は、この条約の従前の改正条約に加入し又はそれらを批准することはできない。
(2) いずれの国も、第一条から第二十一条までの規定及び附属書が効力を生じた後は、ストックホルム改正条約に附属する開発途上にある国に関する議定書第五条の規定に基づく宣言を行うことができない。

第三十五条
(1) この条約は、無期限に効力を有する。
(2) いずれの同盟国も、事務局長にあてた通告により、この改正条約を廃棄することができる。その廃棄は、従前のすべての改正条約の廃棄を伴うものとし、廃棄を行つた国についてのみ効力を生ずる。他の同盟国については、この条約は、引き続き効力を有する。
(3) 廃棄は、事務局長がその通告を受領した日の後一年で効力を生ずる。
(4) いずれの国も、同盟の構成国となつた日から五年の期間が満了するまでは、この条に定める廃棄の権利を行使することができない。

第三十六条
(1) この条約の締約国は、自国の憲法に従い、この条約の適用を確保するために必要な措置をとることを約束する。
(2) いずれの国も、この条約に拘束されることとなる時には、自国の国内法令に従いこの条約を実施することができる状態になつていなければならないと了解される。

第三十七条
(1) (a) この改正条約は、英語及びフランス語による本書一通について署名するものとし、(2)の規定に従うことを条件として、事務局長に寄託する。
(b) 事務局長は、関係政府と協議の上、ドイツ語、アラビア語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語及び総会が指定する他の言語による公定訳文を作成する。
(c) これらの条約文の解釈に相違がある場合には、フランス文による。
(2) この改正条約は、千九百七十二年一月三十一日まで、署名のために開放しておく。その日までは、(1)(a)にいう本書は、フランス共和国政府に寄託する。
(3) 事務局長は、すべての同盟国政府に対し、及び要請があつたときは他の国の政府に対し、この改正条約の署名本書の認証謄本二通を送付する。
(4) 事務局長は、この改正条約を国際連合事務局に登録する。
(5) 事務局長は、すべての同盟国政府に対し、署名、批准書又は加入書の寄託、批准書又は加入書に付された宣言の寄託、第二十八条(1)(c)、第三十条(2)(a)若しくは(b)又は第三十三条(2)の規定に基づいて行われた宣言の寄託、この改正条約のいずれかの規定の効力の発生、廃棄の通告、第三十条(2)(c)、第三十一条(1)若しくは(2)、第三十三条(3)又は第三十八条(1)の規定に基づいて行われた通告及び附属書に規定する通告を通報する。

第三十八条
(1) この改正条約を批准しておらず又はこれに加入していない同盟国でストックホルム改正条約第二十二条から第二十六条までの規定に拘束されていないものは、希望するときは、千九百七十五年四月二十六日まで、それらの規定に拘束される場合と同様にそれらの規定に定める権利を行使することができる。それらの権利を行使することを希望する国は、その旨の書面による通告を事務局長に寄託するものとし、その通告は、その受領の日に効力を生ずる。それらの国は、第一文の日まで、総会の構成国とみなされる。
(2) すべての同盟国が機関の加盟国とならない限り、機関の国際事務局は同盟事務局としても、事務局長は同盟事務局の事務局長としても、それぞれ、職務を行う。
(3) すべての同盟国が機関の加盟国となつたときは、同盟事務局の権利、義務及び財産は、機関の国際事務局が承継する。
附属書

第一条 〔強制許諾制の利用〕
(1) 国際連合総会の確立された慣行により開発途上にある国とされるいずれの国も、この附属書が不可分の一部をなすこの改正条約を批准し又はこれに加入する場合において、その経済状態及び社会的又は文化的必要性にかんがみ、この改正条約に定めるすべての権利の保護を確保するための措置を直ちにとることができないと認めるときは、その批准書若しくは加入書の寄託の際に又は第五条(1)(c)の規定に従うことを条件としてその後いつでも、事務局長に寄託する通告により、次条若しくは第三条に定める権能又はこれらの双方の権能を利用することを宣言することができる。そのような国は、次条に定める権能を利用する代わりに、第五条(1)(a)の規定に基づく宣言を行うことができる。
(2) (a) この改正条約第一条から第二十一条までの規定及びこの附属書がこの改正条約第二十八条(2)の規定に従つて効力を生ずる時から十年の期間が満了する前に通告された(1)の規定に基づく宣言は、その期間が満了する時まで効力を有する。その宣言は、現に経過中の十年の期間の満了の十五箇月前から三箇月前までの間に事務局長に寄託する通告により、更に十年間ずつ全体的又は部分的に更新することができる。
(b) この改正条約第一条から第二十一条までの規定及びこの附属書がこの改正条約第二十八条(2)の規定に従つて効力を生ずる時から十年の期間が満了した後に通告された(1)の規定に基づく宣言は、現に経過中の十年の期間が満了する時まで効力を有する。その宣言は、(a)の第二文に定めるところにより更新することができる。
(3) (1)に規定する開発途上にある国でなくなつた同盟国は、(2)の規定に基づく宣言の更新を行うことができなくなるものとし、また、宣言を正式に撤回するかどうかを問わず、現に経過中の十年の期間の満了の時又は開発途上にある国でなくなつた後三年の期間の満了の時のうちいずれか遅い時に、(1)にいう権能を利用することができなくなる。
(4) (1)又は(2)の規定に基づく宣言が効力を有しなくなつた時に、この附属書に基づいて与えられた許可に基づいて作成された複製物の在庫がある場合には、その複製物は、それが無くなるまで引き続き頒布することができる。
(5) この改正条約に拘束される国であつて、(1)に規定する国の状態と同様の状態にある特定の領域についてのこの改正条約の適用に関しこの改正条約第三十一条(1)の規定に基づく宣言又は通告を寄託したものは、その領域に関し、(1)の宣言及び(2)の更新の通告を行うことができる。その宣言又は通告が効力を有する間は、この附属書は、その宣言又は通告が行われた領域について適用される。
(6) (a) いずれかの同盟国が(1)にいう権能のいずれかを利用しているという事実は、他の同盟国が、その権能を利用している同盟国を本国とする著作物に対し、この改正条約第一条から第二十条までの規定に従つて与えるべき保護よりも低い保護を与えることを許すものではない。
(b) この改正条約第三十条(2)(b)の第二文に規定する相互主義を適用する権能は、(3)の規定に従つて適用される期間が満了する日まで、第五条(1)(a)の規定に基づく宣言を行つた同盟国を本国とする著作物について行使することができない。

第二条 〔翻訳権の強制許諾〕
(1) この条に定める権能を利用することを宣言した同盟国は、印刷その他類似の複製形式で発行された著作物に関し、権限のある機関がこの条に定める条件でかつ第四条の規定に従つて与える非排他的かつ譲渡不能の許可の制度をもつて、この改正条約第八条に規定する排他的翻訳権の代わりとすることができる。
(2) (a) (3)の規定に従うことを条件として、ある著作物の翻訳が、その著作物の最初の発行の時から三年の期間又は(1)に規定する同盟国の法令が定める一層長い期間が満了した後においても、翻訳権を有する者又はその者の許諾を得た者により、その国において一般に使用されている言語で発行されていない場合には、その国の国民は、その著作物をその言語に翻訳し、かつ、その翻訳を印刷その他類似の複製形式で発行するための許可を受けることができる。
(b) 許可は、(a)に規定する言語で発行された翻訳が絶版になつている場合にも、この条の規定に従つて与えることができる。
(3) (a) 一又は二以上の先進同盟国において一般に使用されていない言語への翻訳については、一年の期間をもつて(2)(a)に定める三年の期間の代わりとする。
(b) (1)に規定する同盟国は、当該言語が一般に使用されている先進同盟国の全員一致の合意があるときは、当該言語への翻訳について、その合意に従つて定められる一層短い期間(この期間は、一年よりも短くてはならない。)をもつて(2)(a)に定める三年の期間の代わりとすることができる。もつとも、当該言語が英語、スペイン語又はフランス語である場合には、第一文の規定は、適用されない。その合意は、それを行つた政府が事務局長に通告する。
(4) (a) この条の規定に基づく許可は、三年の期間の満了を条件として受けられる許可については次のいずれかの日から六箇月の期間が満了するまで、一年の期間の満了を条件として受けられる許可については次のいずれかの日から九箇月の期間が満了するまで、与えてはならない。
(i) 許可を申請する者が第四条(1)の手続を行つた日
(ii) 翻訳権を有する者又はその者の住所が明らかでない場合には、許可を申請する者が、許可を与える権限のある機関に提出した許可の申請書の写しを第四条(2)に定めるところに従つて発送した日
(b) 申請が行われた言語への翻訳が翻訳権を有する者により又はその者の許諾を得て(a)の六箇月又は九箇月の期間内に発行された場合には、この条の規定に基づく許可を与えてはならない。
(5) この条の規定に基づく許可は、教育又は研究を目的とする場合にのみ、与えることができる。
(6) 著作物の翻訳が、翻訳権を有する者により又はその者の許諾を得て、当該国において同種の著作物に通常付される価格と同程度の価格で発行された場合において、その翻訳が、許可に基づいて発行された翻訳と同一の言語によるものであり、かつ、ほぼ同一の内容のものであるときは、この条の規定に基づいて与えられた許可は、消滅する。許可の消滅前に既に作成された複製物は、それが無くなるまで引き続き頒布することができる。
(7) 主として図画から成る著作物については、本文を翻訳し及びその翻訳を発行し、かつ、図画を複製し及び発行するための許可は、次条の条件も満たされる場合に限り、与えることができる。
(8) 著作者が著作物の頒布中の複製物をすべて回収した場合には、この条の規定に基づく許可を与えてはならない。
(9) (a) 印刷その他類似の複製形式で発行された著作物を翻訳するための許可は、(1)に規定する同盟国に主たる事務所を有する放送機関がその国の権限のある機関に対して行う申請に基づき、その放送機関にも与えることができる。ただし、次のすべての条件が満たされることを条件とする。
(i) その翻訳が、(1)に規定する同盟国の法令に従つて作成され及び取得された複製物から行われること。
(ii) その翻訳が、教育を目的とする放送又は特定の分野の専門家向けの科学技術情報の普及を目的とする放送において専ら使用されるためのものであること。
(iii) その翻訳が、(1)に規定する同盟国の領域における受信者向けに適法に行われる放送(専らそのような放送のために適法に行われた録音又は録画を用いて行う放送を含む。)において、専ら(ii)の目的のために使用されること。
(iv) その翻訳の使用が、営利性を有しないこと。
(b) この(9)の規定によつて与えられた許可に基づいて放送機関が行つた翻訳の録音又は録画は、当該許可を与えた権限のある機関が属する国に主たる事務所を有する他の放送機関も、(a)に定める目的及び条件で、かつ、その翻訳を行つた放送機関の同意を得て、使用することができる。
(c) 許可は、(a)に定める基準及び条件が満たされることを条件として、専ら教育活動において使用されるために作成されかつ発行された視聴覚的固定物と一体となつている本文の翻訳のためにも、放送機関に与えることができる。
(d) (1)から(8)までの規定は、(a)から(c)までの規定に従うことを条件として、この(9)の規定に基づいて与えられる許可の付与及び行使について適用する。

第三条 〔複製権の強制許諾〕
(1) この条に定める権能を利用することを宣言した同盟国は、権限のある機関がこの条に定める条件でかつ次条の規定に従つて与える非排他的かつ譲渡不能の許可の制度をもつて、この改正条約第九条に規定する排他的複製権の代わりとすることができる。
(2) (a) (7)の規定に従つてこの条の規定が適用される著作物については、その著作物のある特定の版の複製物が、その版の最初の発行の日から起算して次の(i)又は(ii)のいずれかの期間が満了した後においても、複製権を有する者又はその者の許諾を得た者により、(1)に規定する同盟国において同種の著作物に通常付される価格と同程度の価格でその国において一般公衆に又は教育活動のために頒布されていない場合には、その国の国民は、教育活動における使用のため、その価格又は一層低い価格でその版を複製しかつ発行するための許可を受けることができる。
(i) (3)に定める期間
(ii) その国の法令が定める一層長い期間
(b) (a)に規定する頒布が行われた場合において、その頒布に係る版の許諾を得た複製物が、(a)に規定する期間の満了の後に、当該国において同種の著作物に付される価格と同程度の価格で当該国において一般公衆に又は教育活動のために六箇月の間頒布されていないときは、その版を複製しかつ発行するための許可を、この条に定める条件で与えることができる。
(3) (2)(a)(i)にいう期間は、五年とする。ただし、
(i) 自然科学及び科学技術に関する著作物については、三年とする。
(ii) 小説等のフィクション、詩、演劇用の著作物、音楽の著作物及び美術書については、七年とする。
(4) (a) この条の規定に基づく許可は、三年の期間の満了を条件として受けられる許可については、次のいずれかの日から六箇月の期間が満了するまで、与えてはならない。
(i) 許可を申請する者が次条(1)の手続を行つた日
(ii) 複製権を有する者又はその者の住所が明らかでない場合には、許可を申請する者が、許可を与える権限のある機関に提出した許可の申請書の写しを次条(2)に定めるところに従つて発送した日
(b) 三年の期間以外の期間の満了を条件として受けられる許可の場合において次条(2)の規定が適用されるときは、許可は、申請書の写しの発送の日から三箇月の期間が満了するまで、与えてはならない。
(c) (a)又は(b)の六箇月又は三箇月の期間内に(2)(a)に規定する頒布が行われた場合には、この条の規定に基づく許可を与えてはならない。
(d) 著作者が複製及び発行のための許可が申請された版の頒布中の複製物をすべて回収した場合には、許可を与えてはならない。
(5) 次の場合には、著作物の翻訳を複製しかつ発行するための許可をこの条の規定に基づいて与えてはならない。
(i) その翻訳が、翻訳権を有する者により又はその者の許諾を得て発行されたものでない場合
(ii) その翻訳が、許可が申請された国において一般に使用されている言語によるものでない場合
(6) 著作物のいずれかの版の複製物が、複製権を有する者により又はその者の許諾を得て、(1)に規定する同盟国において同種の著作物に通常付される価格と同程度の価格でその国において一般公衆に又は教育活動のために頒布される場合において、その版が、許可に基づいて発行された版と同一の言語によるものであり、かつ、ほぼ同一の内容のものであるときは、この条の規定に基づいて与えられた許可は、消滅する。許可の消滅前に既に作成された複製物は、それが無くなるまで引き続き頒布することができる。
(7) (a) (b)の規定が適用される場合を除くほか、この条の規定が適用される著作物は、印刷その他類似の複製形式で発行された著作物に限定される。
(b) この条の規定は、適法に作成された視聴覚的固定物であつて保護を受ける著作物であるもの又は保護を受ける著作物を収録したものを視聴覚の形式で複製すること及びそれと一体となつている本文を許可が申請された国において一般に使用されている言語に翻訳することについても、適用する。ただし、当該視聴覚的固定物が、専ら教育活動において使用されるために作成されかつ発行されたものであることを条件とする。

第四条 〔強制許諾の手続〕
(1) 第二条又は前条の許可は、許可を申請する者が、権利を有する者に対し翻訳及びその翻訳の発行若しくは版の複製及び発行の許諾を求めたが拒否されたこと又は相当な努力を払つたが権利を有する者と連絡することができなかつたことを当該国の規則に従つて立証する場合に限り、与えることができる。許可を申請する者は、権利を有する者に対し許諾を求めると同時に、(2)に規定する国内的又は国際的情報センターにその旨を通報しなければならない。
(2) 許可を申請する者は、権利を有する者と連絡することができなかつた場合には、著作物にその名を表示されている発行者に対し、及び発行者がその主たる事務所を有していると推定される国の政府が事務局長に寄託した通告で指定した国内的又は国際的情報センターに対し、許可を与える権限のある機関に提出した申請書の写しを書留航空便で送付する。
(3) 第二条又は前条の規定によつて与えられた許可に基づいて行われた翻訳又は複製に係るすべての複製物には、その発行に際し、著作者の名が表示されていなければならない。これらの複製物には、著作物の題名を表示するものとする。翻訳の場合には、これらの複製物に著作物の原題名を表示しなければならない。
(4) (a) 第二条又は前条の規定に基づいて与えられる許可は、複製物の輸出には及ばないものとし、それが申請された国の領域内で翻訳又は複製に係る複製物を発行することについてのみ有効とする。
(b) (a)の規定の適用上、いずれかの領域からその領域について第一条(5)の規定に基づく宣言を行つた国への複製物の送付は、輸出とみなす。
(c) 第二条の規定に基づき英語、スペイン語及びフランス語以外の言語への翻訳の許可を与えた国の政府機関その他の公の機関がその許可に基づいて発行された翻訳の複製物を他の国に送付する場合には、その複製物の送付は、次のすべての条件が満たされる時は、(a)の規定の適用上、輸出とみなさない。
(i) 受取人が、当該許可を与えた権限のある機関が属する国の国民であること又はそのような国民から成る団体であること。
(ii) その複製物が、教育又は研究のためにのみ使用されること。
(iii) その複製物の送付及びその後の受取人への頒布が、営利性を有しないこと。
(iv) その複製物が送付された国が、当該許可を与えた権限のある機関が属する国との間でその複製物の受領若しくは頒布又はその双方を許可することについて合意しており、かつ、当該許可を与えた権限のある機関が属する国の政府がその合意を事務局長に通告していること。
(5) 第二条又は前条の規定によつて与えられた許可に基づいて発行されたすべての複製物には、その許可が適用される国又は領域においてのみその複製物が頒布されるものである旨の表示を適当な言語で記載しなければならない。
(6) (a) 次のことを確保するため、適当な国内措置をとる。
(i) 許可が、翻訳権又は複製権を有する者のため、二の関係国における関係者の間で自由に取り決める利用の許諾の場合に通常支払われる使用料の基準に合致する公正な補償金を伴うこと。
(ii) (i)の補償金の支払及び移転が行われること。通貨に関する国内規制が存在する場合には、権限のある機関は、国際的に交換可能な通貨又はこれに相当するものによる補償金の移転を確保するため、国際的な機構を利用してあらゆる努力を払う。
(b) 著作物の正確な翻訳又は版の正確な複製を確保するため、国内法令により適当な措置をとる。

第五条 〔翻訳権の留保〕
(1) (a) 第二条に定める権能を利用することを宣言することができる国は、この改正条約を批准し又はこれに加入する際に、その宣言の代わりに次の宣言を行うことができる。
(i) この改正条約第三十条(2)(a)の規定が適用される同盟国については、翻訳権に関し、その規定に基づく宣言
(ii) この改正条約第三十条(2)(a)の規定が適用されない国(同盟に属しない国でないものをも含む。)については、同条(2)(b)の第一文に規定する宣言
(b) 第一条(1)に規定する開発途上にある国でなくなつた同盟国については、この(1)の規定に基づいて行われた宣言は、同条(3)の規定に従つて適用される期間が満了する日まで効力を有する。
(c) この(1)の規定に基づいて宣言を行つた同盟国は、その後は、その宣言を撤回した場合にも、第二条に定める権能を利用することができない。
(2) 第二条に定める権能を利用した同盟国は、その後は、(1)の規定に基づく宣言を行うことができない。もつとも、(3)の規定の適用が妨げられることはない。
(3) 第一条(1)に規定する開発途上にある国でなくなつた同盟国は、同条(3)の規定に従つて適用される期間の満了の二年前までは、その国が同盟に属しない国でないという事実にかかわらずこの改正条約第三十条(2)(b)の第一文の規定に基づく宣言を行うことができる。その宣言は、第一条(3)の規定に従つて適用される期間が満了する日に効力を生ずる。

第六条 〔事前適用〕
(1) 同盟国は、この改正条約の作成の日からこの改正条約第一条から第二十一条までの規定及びこの附属書に拘束されることとなる時まではいつでも、次のことを宣言することができる。
(i) 当該同盟国が、この改正条約第一条から第二十一条までの規定及びこの附属書に拘束されるとしたならば第一条(1)に規定する権能を利用することができるであろう国の場合には、(ii)の規定に従い第二条若しくは第三条若しくはその双方の規定の適用を認める国又はこの改正条約第一条から第二十一条までの規定及びこの附属書に拘束される国を本国とする著作物について、第二条若しくは第三条又はその双方の規定を適用すること。もつとも、その宣言において、第二条の規定に代えて前条の規定を適用する旨を述べることができる。
(ii) 自国を本国とする著作物について、(i)の規定に基づく宣言又は第一条の規定に基づく通告を行つた国がこの附属書を適用することを認めること。
(2) (1)の規定に基づく宣言は、書面によつて行うものとし、事務局長に寄託する。宣言は、寄託の日に効力を生ずる。

以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けて、この改正条約に署名した。

千九百七十一年七月二十四日にパリで作成した。

出典:http://www.cric.or.jp/db/treaty/t1_index.html