2022年1月12日

【転載】(原文は上海漢盛律師事務所の公式WeChatに掲載されたものです)

作者  上海漢盛律師事務所
シニア・パートナー 弁護士 羅 浩
弁護士 劉宗仁

2021年改正著作権法施行前の時点で、オンラインゲーム画面影像が2015年著作権法所定の「映画と類似する著作物」に含まれることにつき、判例・学説ともに意見の一致を見ていた。権利者はゲーム画面影像を「美術の著作物」、「言語の著作物」、「音楽の著作物」、「映画の著作物」、「コンピューターソフトウェアの著作物」など、著作権法が規定する著作物類型をもとに権利主張しなければならないという問題から解放された。
しかし、裁判所が2015年にゲーム「奇跡神話」著作権侵害・不正競争事件(被侵害ゲームは「奇跡MU」)においてオンラインゲーム画面影像を「映画の著作物」と認定後、まだ6年しか経過していない。その間、判例や学説の発展が十分ではなかったため、オンラインゲーム画面著作物の属性につき、不明な点がすくなくない。例えば、プロットが存在しないか少ないオンラインゲーム、クリア類ゲーム、カードゲームなどを「映画の著作物」と認定できるかどうか、というものがある。
2021年改正著作権法の施行後、「映画と類似する著作物」は「視聴覚著作物」と表現されるようになった。また、著作物類型として「著作物の要件を充足するその他知的成果物」が新たに追加され、2010年著作権法上の問題が解決を見た。2010年著作権法は著作物の保護につき、同法およびその他の法律に定められた著作物類型であることが求められていた。
しかし、オンラインゲーム画面影像については2021年改正著作権法と2010年著作権法の間でどのような理論的な調整がなされるべきか、2021年改正著作権法所定の「視聴覚著作物」とすべきかどうかにつき、新しい問題が提起されている。

仮説1:「視聴覚著作物」の範囲は「映画の著作物」および「映画と類似する著作物」の範囲と同一である。

2021年改正著作権法は、「映画の著作物および映画と類似する著作物」を「視聴覚著作物」と定義し直している。「視聴覚著作物」にはさらに2つの類型がある。「映画・テレビの著作物」と「その他の視聴覚著作物」である。「視聴覚著作物」の定義がまだなされていないことから、このような問題が生じている。まず、この変更は単に表現を変えただけなのか、それとも、「映画の著作物および映画に類似する著作物」という以前の著作物類型に基づき範囲を拡大したものなのか。そして、2021年改正著作権法の下で「映画に類似する著作物」はどの著作物類型に帰属するのかである。
「映画の著作物および映画に類似する著作物」と「視聴覚著作物」は、いずれも外来語に由来する。前者は1948年締結のベルヌ条約、後者は1989年締結の「視聴覚著作物国際登録条約」である。中国は現在、この2つの条約に加盟している。「視聴覚著作物国際登録条約」は「視聴覚著作物」を「音声の有無にかかわらず、録画された一連の画面であり、視覚的に感じられる作品で、音声が含まれている場合、聴覚的に感じられるもの」と定義している。 WIPOによる「WIPO著作権管理・関連権利条約管理ガイドラインおよび著作権・関連権利用語集」で「視聴覚著作物」は、ベルヌ条約2条1項所定の文学芸術著作物における「映画の著作物および映画に類似する方法で表現された著作物」と同義である。王遷教授によれば、「視聴覚著作物」の範囲は「映画の著作物および映画と類似する著作物」の範囲と同一であり、「映画の著作物および映画と類似する著作物」のかわりに「視聴覚著作物」としたのは、用語の簡略化のためとしている[1]。
この見解によれば、2021年改正著作権法の「視聴覚著作物」の意義と範囲は、2010年著作権法の「映画の著作物および映画と類似する著作物」と完全に同じである。したがって、2010年著作権法の「映画と類似する著作物」に該当するオンラインゲーム画面も、新著作権法において「視聴覚著作物」として保護されることになる。また、王遷教授は映画やテレビドラマは明らかに「映画・テレビ著作物」であることから、ゲーム画面は「その他の視聴覚著作物」に分類されるべきであるとしている[2] 。

仮説2:オンラインゲーム画面全体は「視聴覚著作物」である。

オンラインゲーム画面を「視聴覚著作物」とすることは、新旧著作権法を円滑かつ論理的に継続させるための最良の選択肢のひとつである。しかし、本稿の冒頭で述べたとおり、オンラインゲーム画面の著作物認定は多くの問題がある。2021年改正著作権法は多くの著作物類型の中で、「著作物の特徴を充足するその他の知的成果物」を新たに追加している。これは著作物認定が法律に規定された特定著作物類型に属しなければならないという制限を超え、オンラインゲーム画面著作物認定にあらたな可能性を与えていると思われる。

王展・弁護士と姜哲・弁護士は、提示された画面の内容にかかわらず、「映画の著作物および映画と類似する著作物」の制作プロセスはオンラインゲームのそれとは完全に異なることを指摘している。映画の表現手段は映像であり、ひとつの映像はカメラの電源を1回入れた後に撮影した画面である。連続再生される数枚の写真と比べ、映像は時間と空間の連続的な変動を示す。1本の映画の制作プロセスは脚本に従い、さまざまな角度・手法・場面で映像を大量に制作し、論理的に接続することでそれらを編集しつなぎ合わせるものである[3] 。

一方、オンラインゲームの表現手段は場面の画面と操作の画面である。前者はプレイヤーがキャラクターを操作し、ゲームマップ上で移動・戦闘することで形成される一連の画面であり、後者はルールや道具効果を説明する画面である。オンラインゲームの制作プロセスは企画、アートワーク、プログラミングの3つにおおきく分けられる。企画プロセスではキャラクター養成体制、副本システム、装備・道具システム、戦闘システムがデザインされ、ゲームの骨格が完成する。アートワークプロセスではキャラクター、道具、場面がデザインされ、ゲームの「血肉」となる。プログラミングプロセスではプレイヤーが各コマンドでアクセスできるデータ資源をデザインし、ゲームの「筋」をつなぐ [4] 。

「映画の著作物および映画と類似する著作物」の表現手段、制作プロセス、芸術レベルを比較すると、両者は大きな違いがある。オンラインゲーム画面を2021年改正著作権法9条所定の「著作物の特徴を充たすその他の知的成果物」として保護することが最も適切であると2人の弁護士は考えている [5]。

2人の弁護士はオンラインゲームと映画の本質について深い理解と見識を有する。これら2種類の著作物の制作プロセスとそれぞれの特徴についての論旨は非常に斬新である。しかし、表現手段と制作プロセスだけで著作物を分類することは、過去の判例と整合性がとれないと筆者は考える。裁判所は技術の面では中立的な観点をより多く採用し、ゲーム画面の制作手段、著作権法実施条例所定の「一定の媒体による撮影」はいずれも、「映画と類似する著作物」の構成要素ではないとしている[6]。各国の法律や裁判例においても視覚的表現効果は優先され、制作手段はあまり重視されていない。シーンと場面画面と操作画面の違いにせよ、映画の制作プロセスとオンラインゲームの制作プロセスの違いにせよ、いずれも技術の面でオンラインゲームと映画著作物は区別される。この分類はこれまでの判例上の考え方を否定するに等しい。関係者に大きな困惑をもたらし、先行きの見通しを暗くする。

これまでの考え方を踏襲し、オンラインゲーム画面も「視聴覚著作物」として保護すべきであると筆者は考える。

仮説3:異なるオンラインゲーム画面を時空変換の有無で区別すべき

しかし、これまでの判例の考え方を踏襲すると、さまざまな理由から、これまでの判例上の問題が未解決のままであることが明らかになる。例えば、オンラインゲーム画面を映画と類似する著作物(視聴覚作著作物)とするためには、プロットを持たなければならないのかどうか。一方、ある風景映画著作物やドキュメンタリー著作物は、プロットがないにもかかわらず、「映画の著作物および映画と類似する著作物」とすることを妨げないと上海浦東新区裁判所は判断している。一方、ゲーム「奪宝捕魚」は特定のゲームキャラクターやプロットがなく、一般的な映画撮影に類似する方法により作成された著作物の中核的な要素を欠いている、と広州知識産権裁判所は指摘する。

画面の連続性を例にすると、ゲーム「数碼大冒険」著作権侵害事件(被侵害ゲーム:「拳皇」)において、上海知識産権裁判所は以下のとおり判示している。すなわち、「ゲーム『拳皇』は格闘カードゲームであり、カードゲームは通常操作中に若干の非連続の静止画面があらわれる。ほとんどの画面は主に静止画面で、プレイヤーの操作によって静止画面から別の画面に変化し、切り替わる。ほとんどの画面の間に連続性はなく、キャラクターや物が動いている様子が見えない」。したがって、すべての連続画面が「映画と類似する著作物」を構成するわけではない。しかし同様に、「映画と類似する著作物」を構成する連続画面と、それを構成しない連続画面を区別するための明確な基準もない。

これら2つの問題はただ、著作物の判断基準が明確ではいないから生じたものである。類似する問題は多数存在する。例えば、カードゲームはどの類型の著作物であるか、moba類作品はどの類型の著作物であるかといった問題である。そのため、オンラインゲーム画面を「映画と類似する著作物」として保護することはその場しのぎに過ぎない、あるゲーム従業者は指摘している [7] 。 オンラインゲーム業界には「オンラインゲーム」商品カテゴリーにロールプレイング(RPG)、スポーツ(SPT)、ストラテジー(SLG)、アクション(ACT)などがある。しかし、カテゴリーごとのゲームは、ルール、視覚効果、システム設計などが大きく異なる同時に、相互に浸透・融合している。したがって、すべてのオンラインゲーム画面を一つのカテゴリーで保護することは、オンラインゲーム業界の現状にそぐわない可能性がある。また、実際には多くの問題が発生しており、異なるオンラインゲーム画面を個別に保護することがより現実的な方法である。

オンラインゲーム画面をどのような基準で区別し、異なる類型の著作権保護を与えるべきか。2人の弁護士の考え方をある程度、参考とすべきであると筆者は考える。つまり、映画画面は簡単な連続的な画像だけではなく、映画世界の時間と空間の変化も示す。したがって、オンラインゲーム画面の違いは、「映画世界の時間と空間の変化も示すか」という基準で区別できると筆者は考える。時間の面では、ゲームは一定のデザインを有すべきである。例えば、レベル、スコア、装備、キャラクターの持続的変化で時間の変化を示す。空間の面では、周辺場面の持続的変化で空間の変化を示す。時間の変化と空間の変化を示すことができるオンラインゲーム画面は、映画画面の一般的な特徴を充たしており、「視聴覚著作物」の「その他の視聴覚著作物」とするべきである。一方、このような時間の変化と空間の変化を示すことができないオンラインゲーム画面は、一般的に著作権法における著作物とするべきではない。しかし、音楽、脚本などの一部の要素が確実に著作物の基準を充足する場合、それらを個別に保護し、または「著作物の特徴を充足するその他の知的成果物」として保護することができる。

この分類方法の利点は、判例の考え方を踏襲する前提で、実践で生じた多くの問題を解決できることである。プロットに関する例を挙げると、時空変換は完全にプロットに対する要求を取り消している。これは、ゲーム「奪宝捕魚」著作権侵害事件(原告:「広州動享」、被告:「広州卓夢」)における広州知識産権裁判所の判決理由と、ゲーム『数碼大冒険』著作権侵害事件(原告:「拳皇」)における上海知識産権裁判所の判決理由とは異なる。しかし、「拳皇」も「数碼大冒険」もカードゲームであり、「奪宝捕魚」は同じ固定画面の下で武器を操作し、動く魚をターゲットとして捕まえるゲームである。この3種類のゲームは、いずれも固定画面の下で同一の要素が常に繰り返される。一般の視聴者から見ると、これらのゲーム世界の空間変化が感じられないことから、「視聴覚著作物」には該当せず、裁判所の判断と実質的に異なるところはない。同様に、mobaゲーム(例えば「王者栄耀」)やFPSゲーム(例えば「守望先鋒」)はプレイヤーが操作を続けることで場面が常に変化する。加えて、キャラクターが倒されたり蘇生されたりしているのは、ゲーム世界の空間と時間変化を明確に示すことができ、「視聴覚著作物」に該当する。これらの結果も一般的認識や判例と一致する。同時に、この基準は画面連続性の要求をさらに高め、映画や視聴覚著作物の性質により近くなる。

結論

新著作権法は従来の著作物類型を改正した。第一に、「映画の著作物および映画の制作に用いられる方法に類似する方法により制作された著作物」を「視聴覚著作物」とした。第二に、「その他の法律・行政法規に規定された著作物」を「著作物の特徴を充足するその他の知的成果物」としている。前者が映画の著作物と映画と類似する著作物の範囲を変えないとすれば、後者は著作物類型の認定に柔軟性を与える。

オンラインゲーム画面著作物の属性について、すべての類型のゲームをオンラインゲームという概念として議論することは、種類もゲームプラットフォームも多種多様である現在の業界現状にそぐわない。ゲーム画面ごとに大きな違いがあることを正しく理解し、異なる種類のゲーム画面が異なる著作物に属することを認識すべきである。このような理解にもとづき、異なるオンラインゲーム画面を「映画世界の時間と空間の変化も示すか」という基準で分類し、この基準を充たすオンラインゲーム画面を「視聴覚著作物」とすべきである。同様に、この基準を充たさないオンラインゲーム画面は著作物として保護するには価しない。しかし、他の側面で「著作物の特性を充たす」場合、音楽・美術著作物や「その他の知的成果物」として保護することができる。

参考文献

[1]王遷、論視聴作品的範囲及権利帰属[J]、中外法学、2021(33)
[2]同上
[3]王展、姜哲、新《著作権法》背景下網路遊戲作品類型之司法探究[EB/OL].
https://mp.weixin.qq.com/s/yDIaJdGJWVULmZB9FyY5jg
[4]同上
[5]同上
[6](2015)浦民三(知)初字第529号
[7]張玲娜、網路遊戲直播画面的著作権保護路径(上)[EB/OL]. https://mp.weixin.qq.com/s/m9QhQhyvs8bXSfju8RAT4Q