2023年5月04日

前書き

国家知識産権局は2023年1月13日、『中華人民共和国商標法(意見募集稿)』を公表しました。各業界からの関心が高まっています。

中国の現行商標法は1983年の施行以来、1993年・2001年・2013年・2019年と4回の改正を経ています。これまでは既存の構造に基づき、内容の一部を改正してきました。今回の改正案は全面的で、かつ大幅です。

分量から見ると、改正案は全10章全101条までに及んでいます。そのなかで、新規条文は23件、内容が実質的に改正された条文は45件もあります。構造の点からは総則が簡素化され、「商標登録の条件」及び「商標の使用、役務と商標ブランド構築を促進」の2章が追加されることになります。商標法の全体的な改善を図ろうとしています。ただ、権利者に不利な内容も少なくありません。

当社は改正案(意見募集稿)に対し、知識産権局にコメントを提出しました。

改正案のまとめ(知識産権局の姿勢)

商標権保護の実務において、以下の5つの深刻な問題があると認識している。

  1. 商標を登録しても使用しないことが多い。
  2. 「買占め商標」「遊休商標」が正常な事業活動に基づいた商標登録を妨げている。
  3. 商標の抜け駆け登録が依然として行われている。特に公共資源、話題となっている物事、突発事件に特有の表現、有名人の氏名などの冒認登録が頻繁に現れている。このような不正行為を禁止できていない。
  4. 商標権の保護に支障が多い。非合理な合法手続き、冒認出願の繰り返しなどの問題により、当事者の権利保護費用が多額化している。
  5. 不当な権利行使および濫用が時に起こっている。訴訟を通して利益をあげることに加え、不正目的による訴訟問題がますます深刻になってきた。

現行商標法は以下の4つの問題がある。

  1. 「登録重視・使用軽視」の商標制度となっている。登録前の使用意思に対する強調が不十分、登録後の使用義務に対する関心が足りない。
  2. 冒認登録対策の範囲が狭く、効果が薄い。商標出願・登録の関連手続きについて全般的に管理・監督・取締りを行っていても、それを禁止できでいない。。
  3. 商標審査と権利付与手続きが複雑で、各手続きの連携が不十分である。手続き濫用の抑止および、当事者の手続き上の利益保護に関する規定を改善する必要がある。
  4. 商標保護の強化に関する規定を充実させる必要がある。インターネットでの商標権侵害規制が足りない。「馳名商標」の保護規則は健全的ではない。

改正案の構造に関する考え方

  1. 商標不正登録抑止に関する具体的措置

罰金の高額化、「強制移転制度」(冒認商標を強制的に権利者に譲渡させること)の新設、民事賠償責任の明確化、知的財産権公益訴訟制度の構築など

  1. 繰り返し登録禁止の基本原則を確立

登録商標が3年連続不使用取消審判により無効とされることを防ぐため、商標登録人は3年ごとに同一商標の出願・登録を繰り返している場合がある。

商標が異議申立て・無効審判請求により無効とされることへの対策として、同一・類似商標が頻繁に出願・登録されている。

物件法の「一物一権」主義に基づき、専利法における二重特許の関連規定を参酌し、登録商標の「一商標一権利」の価値観を強調する。

  1. 商標の審査審理手続きの改善制度調整

異議申立てに関する登録拒絶再審手続きを取りやめる。これはひとつの紛争事件がひとつの行政機関で行政審査手続きが3回も行われることを避けるためである。「行政審査は2回まで」という通常手続きと矛盾しているからである。

異議申立ての審査形式を改善する。簡易審査の手続きを新設することにより、異議申立ての審理を簡略・複雑のふたつに分ける。複雑案件については意見質疑、口頭審理などの方法も検討している。

  1. 商標の使用義務強化制度の構築

中国では登録商標が2022年11月までに4,233.7万件にも達している。

以下の制度、規定を新たに設置する予定である。

・出願人は商標出願の際に使用意思の承諾を提出

・登録人は登録後の使用状況説明を提出

・商標局は使用状況説明を不定期に審査する。不適切な事情が見つかった場合には商標の登録を取り消し

  1. 商標代理の資格を設ける。

当社のコメント

当社は実務の視線から、知識産権局に以下のコメントを提出しました。

【説明】下線:改正前内容、削除線:削除内容、青文字:改正後・新規追加内容

コメント① 10条【馳名商標およびその保護原則】

「(六)当該商標の価値」を削除

理由 ⒈ 商標価値の評価につき、統一・明確・客観的な基準はない。信憑性の高い第三者認定機構も存在しない。したがって、認定結果に関する紛争を招き、また不公平な結論が導かれる虞れがある。

⒉ 商標価値の評価と馳名商標認定請求の提出資料はほぼ変わらない。権利者に余計な立証負担をかける。

現行規定 131

関連公衆に広く知られている商標につき、所有者はその権利が侵害されたと判断した場合、本法の規定にもとづき、馳名商標の保護を請求することができる。

141

馳名商標は当事者の請求により、商標に係る案件の処理において認定が必要な事実として認定を行わなければならない。馳名商標の認定においては、以下の要素を考慮しなければならない。

(一)関連公衆の当該商標に対する認知度

(二)当該商標の継続的な使用期間

(三)当該商標に関するあらゆる宣伝業務の継続期間、程度および地理的範囲

(四)当該商標の馳名商標としての保護記録

(五)当該商標が著名であることに関するその他の要素

意見募集稿 10条【馳名商標およびその保護原則】

関連公衆に広く知られている商標につき、所有者はその権利が侵害されたと判断した場合、本法の規定にもとづき、馳名商標の保護を請求することができる。

馳名商標の保護は個別案件での確認、受動的保護および必要に応じた確認の原則に従う。

馳名商標の保護範囲および強度は、その顕著性および著名度に適応しなければならない。

商標の馳名状況は当事者の請求により、商標に係る案件の処理において認定が必要な事実として確認しなければならない。商標の馳名状況の確認においては、以下の要素を総合的に考慮しなければならない。

(一)関連公衆の当該商標に対する認知度

(二)当該商標の持続的な使用期間方式および地域の範囲

(三)当該商標のあらゆる広告業務の持続期間、程度および地理的範囲

(四)当該商標の国内および国外における出願と登録の状況

(五)当該商標が保護された記録、とくに馳名商標として保護された記録

(六)当該商標の価値

(七)当該商標が馳名であることに関するその他の要素

コメント② 14条【登録要件】

すでに登録されている同一商標の効力に関する規定を追加

理由 現行の登録商標の有効性が明確にされなければならない。
現行規定 91

登録・出願商標は顕著な特徴を有し、容易に識別できるものでなければならない。また、他人が先に取得した合法的権利と抵触してはならない。

意見募集稿 14条【登録要件】

登録・出願商標は顕著な特徴を有し、容易に識別できるものでなければならない。また、公序良俗に違反してはならず、他人が先取得した合法的権利または権益と抵触してはならない。

別途規定がある場合を除き、同一出願人は同一商品または役務において、同一商標をひとつだけしか登録できない。

コメント③ 15条【使用禁止標章】

(5)号「重要な伝統文化記号の名称および標章と同一または類似するもの。ただ、関連の許可を取得した場合は除く」を削除

あるいはこの条文にある「または類似する」を削除

あるいはこの条文にある「または類似する」を「または細微な差異しかない」に修正

理由 ⒈  「重要な伝統文化記号の名称及び標章」の概念が明らかではない。

⒉  「長城」「熊猫」のような「伝統文化記号」を商標として登録した事例が数多くある。具体的な事情に合わせて判断しなければならない。さらに、(9)号「中華の優れた伝統文化を害し、またはその他の悪影響を及ぼすもの」で制約することも可能である。

⒊  すでに登録されている「伝統文化記号」商標は、標章の更新・事業内容の拡張に伴う新たな出願が必要となる場合がある。
このよう状況につき、例外の規定を追加する必要がある。

現行規定 10【使用禁止標章】

次に掲げる標章は、商標として使用してはならない。

(一)中華人民共和国の国名、国旗、国章、国歌、軍旗、軍章、軍歌、勲章等と同一または類似のもの及び中央国家機関の名称、標章、所在地の特定地名または標章性を有する建築物の名称若しくは図形と同一のもの。

(二)外国の国名、国旗、国章、軍旗等と同一または類似のもの。ただし、当該国の政府の許諾を得ている場合はこの限りでない。

(三)各国政府よりなる国際組織の名称、旗、徽章等と同一または類似のもの。ただし、同組織の許諾を得ている場合、または公衆に誤認を生じさせない場合はこの限りでない。

(四)実施管理し、保証することを表す政府の標章または検査印と同一または類似のもの。ただし、その権利の授権を得ている場合はこの限りでない。

(五)「赤十字」、「赤新月」の名称、標章と同一または類似のもの。

(六)民族差別的な扱いの性質を帯びたもの。

(七)欺瞞性を帯び、公衆に商品の品質等の特徴または産地について誤認を生じさせやすいもの。

(八)社会主義の道徳、風習を害し、またはその他の悪影響を及ぼすもの。

県級以上の行政区画の地名または公衆に知られている外国の地名は商標とすることができない。ただし、その地名が別の意味を持つ場合、または団体商標、証明商標の一部である場合はこの限りでない。地名を使用して既に登録された商標は、引き続き有効なものとする。

意見募集稿 15条【使用禁止標章】

次に掲げる標章は商標として使用してはならない。

(一)中華人民共和国の国名、国旗、国章、国歌、軍旗、軍章、軍歌、勲章等と同一または類似のものおよび、中央国家機関の名称、標章、所在地の特定地名または標章性を有する建築物の名称もしくは図形と同一のもの。

(二)外国の国名、国旗、国章、軍旗等と同一または類似のもの。ただし、当該国の政府の許諾を得ている場合はこの限りでない。

(三)各国政府よりなる国際組織の名称、旗、徽章等と同一または類似のもの。ただし、同組織の許諾を得ている場合、または公衆に誤認を生じさせない場合はこの限りでない。

(四)実施管理し、保証することを表す政府の標章または検査印と同一または類似のもの。ただし、その権利の授権を得ている場合はこの限りでない。

(五)重要な伝統文化記号と名称および標章が同一または類似するもの。ただし、関連組織の許可を得ている場合は除く。

(六)「赤十字」、「赤新月」の名称、標章と同一または類似のもの。

(七)民族差別的な扱いの性質を帯びたもの。

(八)欺瞞性を帯び、公衆に商品の品質等の特徴または産地について誤認を生じさせやすいもの。

(九)社会主義の核心的価値観に反し、社会主義の道徳、風習や中華の優れた伝統文化を害しまたはその他の悪影響を及ぼすもの。

県級以上の行政区画の名称または、公衆に知られた国内及び国外の地名は商標とすることができない。ただし、その地名が別の意味を持つ場合、または団体商標、証明商標の一部である場合はこの限りでない。地名を使用して既に登録された商標は、引き続き有効なものとする

コメント④ 21条【重複登録の禁止】

(二)、(三)号を以下のとおり修正

(二)先行商標が更新登録しなかったことにより、登録を無効とされた場合(「出願人の責めに帰することができない事由」を削除)

(三)商標使用説明が適時に提出されなかったことで先行登録商標が抹消された場合(「当該先行商標が実際に使用されていた」を削除)

理由 ⒈ 実際に使用されている商標につき、管理が行き届かないことで登録更新できていない場合がある。その元登録人による同一商標の再出願に対し、「重複登録」の理由で拒絶査定する場合、処罰が厳しすぎる。

⒉ 使用準備中の商標はいろいろな事情で適時に使用説明書を提出できない可能性がある。出願人にとって、商標の再出願により出願日が遅くなるという不利な影響がある。ただ、これ以上に処罰与えることは合理的ではない。

⒊ 著名な商標または馳名商標の防御出願・登録に不利である。権利者の商標登録していない、または事業内容以外の区分での冒認登録が一層頻繁になる虞れがある。

現行規定 (新規追加)
意見募集稿 21条【重複登録の禁止】

登録・出願商標は出願人が同一の商品で先に出願されたもの、またすでに登録されているもの、または出願日前の1年以内に公告抹消、取消、無効宣告された先行商標と同一のものであってはならない。ただし、以下に掲げる事情がある場合または出、願人が元の登録商標の抹消に同意した場合はその限りでない。

(一)生産・事業営必要により、実際に使用されている先行商標に基づき細微な改善を行った場合であって、出願人がその差異を説明できる場合

(二)出願人の責めに帰することができない事由により、先行商標が更新登録できなかった場合

(三)商標使用説明書が適時に提出されなかったことで先行登録商標が抹消された。ただ、当該先行商標が実際に使用されていた場合

(四)出願人の責めに帰することができない事由により、先行商標が3年不使用取消手続において使用証拠を提供できす、登録を取り消された。ただ、当該先行商標が実際に使用されていた場合

(五)先行商標が他人の先行権利または権益と衝突することで無効宣告された。ただ、当該先行権利または権益が既に存在しなくなった場合

(六)その他正当な理由があり、商標出願を繰り返し、または新たに出願する場合

コメント⑤ 22条【悪意の商標登録出願】

著名商標または馳名商標の防御出願・登録に関する例外規定を追加

理由 著名商標または馳名商標冒認登録防止制度が構築されていない。

一部の権利者は冒認登録を防ぐため、複数またはすべての区分で商標を登録するという対策を講じざるを得ない。冒認登録から商標権を保護する方法を明確化しなければならない。

現行規定 (新規追加)
意見募集稿 22条【不正目的の商標登録出願】

出願人は以下に掲げる不正目的の商標登録出願をしてはならない。

(一)使用を目的とせず、大量に商標出願をし、商標登録秩序を乱すこと

(二)欺瞞または他の不正な手段により商標登録出願すること

(三)国益、社会公共利益を損なうまたは、その他の重大な悪影響を及ぼす商標を登録出願すること

(四)本法の18条、19条、23条の規定に違反し、故意に他人の権利または権益を害し、または不正な利益を図ること

(五)その他の不正目的の商標登録出願行為

コメント⑥ 25条【先行出願】

「出願日の前後が判断できない」を削除

すなわち、現行規定を変更しない

理由 オンラインで出願された場合、秒単位での出願時間を確認できるはず。同一時間帯での出願が激増する虞れがあり、商標局のシステムが過負荷で故障してしまう可能性が高い。

その場合、関連公衆による通常な必要に基づいた商標局のシステム利用に影響が及ぶ一方で、公平原則維持の目的が実現できない。

現行規定 31【先行出願】

2人または2人以上の商標登録出願人が、同一または類似の商品において同一または類似の商標を出願したときは、先に出願された商標について基本査定し、公告する。同日出願については、先に使用された商標について基本査定および公告し、他方の出願については拒絶し、公告しない。

意見募集稿 25条【先行出願】

2人または2人以上の商標登録出願人が、同一または類似の商品において同一または類似の商標を出願したときは、先に出願された商標について基本査定し、公告する。同日出願のうち、時間の前後が区別できないものについては、先に使用された商標について基本査定および公告し、他方の出願については拒絶し、公告しない。

コメント⑦ 26条【代理機構による商標登録出願の制限】

本条を削除

理由 ⒈ 代理機構の自社ブランド保護に不利である。

⒉ 代理機構の正当な事業展開活動が制約される。

現行規定 194

商標代理機構は代理業務に係る商標の登録出願を除き、その他の商標出願・登録をしてはならない。

意見募集稿 26条【代理機構による商標登録出願の制限】

商標代理機構は代理業務に係る商標の登録出願を除き、その他の商標出願・登録をしてはならずその他の方法を通じた上記の行為に従事してはならない。

コメント⑧ 27条【出願の要件】

以下の内容を削除

「国務院の知的財産権行政部門は、出願商標が明らかに重大な悪影響を及ぼすものであることがわかった場合、これを受理しない。」

理由 ⒈ 形式審査の段階で実質審査作業が行われてしまう。

⒉ 「拒絶査定」と比べ、「不受理」の審査結果に対する救済方法、ルート、効果ははるかに低い。出願人にとって、救済措置が不十分である。

現行規定 22【出願の要件】

商標出願人は定められた商品分類表に基づき、商標の指定商品区分および商品の名称を明記し出願しなければならない。

商標出願人は一つの出願において、多数の区分で同一の商標を出願することができる。

意見募集稿 27条【出願の要件】

商標出願人は定められた商品分類表に基づき、商標の指定商品区分および商品の名称を明記し出願しなければならない。

商標出願人は一つの出願において、多数の区分で同一の商標を出願することができる。

商標出願にかかわる費用を納めなかった場合、当該商標出願が提出されなかったとみなす。

商標登録出願の関連書類は書面または電子データにより提出しなければならない。

商標出願の手続に誤りがなく、規定に従って出願書類が記入された場合、国務院の知的財産権行政部門はこれを受理し、出願人に通知する。国務院の知的財産権行政部門は出願商標が明らかに重大な悪影響を及ぼすものであることがわかかった場合、これを受理しない。

コメント⑨ 36条【商標の異議申立】

異議申立て期限を3ヶ月に維持する。

理由 中国では冒認出願が依然として氾濫している。初審公告期間が2ヶ月に短縮されると、権利者のウォッチング難易度が高まる。
現行規定 33【商標の異議申立】

基本査定公告された商標について、公告日から3ヶ月以内に、本法の132項および3項、15条、161項、30条、31条、32の規定に違反していると先行権利者、利害関係者が判断したとき、または本法の4条、10条、11条、12条、194の規定に違反していると何人が判断したときは、商標局に異議を申し立てることができる。公告期間を満了しても異議申立がなかったときは登録を認め、商標登録証を交付し公告する。

意見募集稿 36条【商標の異議申立】

初歩査定公告された商標について、公告日から2ヶ月以内に、本法の18条、19条、211項、23条、24条、25の規定に違反していると先行権利者、利害関係者が判断したとき、または本法の15条、16条、17条、18条、21条、221項および2項、26の規定に違反していると何人が判断したときは、国務院の知的財産権行政部門に異議を申し立てることができる。公告期間を満了しても異議申立がなかったときは、登録を認め、商標登録証を交付し公告する。

コメント⑩ 38条【拒絶に係る復審】

不服審判を請求する期限を「15日」から「30日」に延長する。

理由 15日間は短すぎる。とくに連休を挟んでいる場合、海外の権利者に連絡・検討・判断する時間を十分に与えられない。
現行規定 34【拒絶に係る復審】

出願を拒絶し公告しない商標について、商標局は書面で商標出願人に通知しなければならない。商標出願人に不服があるときは、通知を受領した日から15日以内に、商標評審委員会に復審を請求することができる。商標評審委員会は、請求を受けた日から9ヶ月以内に決定を下し、書面で請求人に通知しなければならない。特別な事情があり、延長することが必要なときは、国務院工商行政管理部門の許可を得て3ヶ月間延長することができる。当事者に商標評審委員会の決定に不服があるときは、通知を受領した日から30日以内に人民法院に訴えを提起することができる。

意見募集稿 38条【拒絶に係る復審】

出願を拒絶し、公告しない商標について、国務院の知的財産権行政部門は書面で商標出願人に通知しなければならない。商標登録人に不服があるときは、通知を受領した日から15日以内に、務院の知的財産権行政部門に復審請求をすることができる。国務院の知的財産権行政部門は、請求を受けた日から9ヶ月以内に決定を下し、書面で請求人に通知しなければならない。特別な事情があり、延長することが必要なときは、許可を得て、3ヶ月間延長することができる。当事者は出願拒絶に係る復審の決定に不服があるときは、通知を受領した日から30日以内に人民法院に訴えを提起することができる。

コメント⑪ 42条【手続の中止】

1項「審査審理を中止することができる」を「審査審理を中止しなければならない」に改正

あるいは2項を削除

理由 本条の定めた事情が生じた場合、行政段階での審査審理手続きが中止されなければならない。

そうでなければ、権利者は合理的ではない行政結果に対し、救済措置を失い、関連権利に損害が生じる。または出願を繰り返さなければならない。行政機関に無駄な審査負担をかける。

現行規定 353

商標評審委員会は前項の規定に基づき復審を進めるなかで、関連先行権利の確定が裁判所での審理係属中であるか、または行政機関が処理している別案件の結果を根拠としなければならないときは、審査を中止することができる。中止の原因が解消された後は、審査手続を再開しなければならない。

意見募集稿 42条【手続の中止】

国務院の知的財産権行政部門は商標の審査審理において、関連先行権利の確定が裁判所で審理中であるか、または行政機が処理している別案件の結果を根拠としなければならないときは、審査審理を中止することができる。中止の原因が解消された後は、速やかに審査審理手続を再開しなければならない。

裁判所は国務院の知的財産権行政部門が本法の24条、25条に基づいて下した復審決定、登録拒絶決定または無効宣告裁定を審理するときは、被訴決定・裁定が下されたときの事実状況を基準としなければならない。被訴決定・裁定が下された後に生じた関連商標の事情変更は、裁判所の被訴決定・裁定の審理に影響を与えない。公平の原則に明らかに違反している場合はその限りでない。

コメント⑫ 44条【絶対的理由による無効宣告】

復審を請求する期限を「15日」から「30日」に延長する。

理由 15日間は短すぎる。とくに連休を挟んでいる場合、海外の権利者に連絡・検討・判断する時間を十分に与えられない。
現行規定 44条【絶対的理由による無効宣告】

登録されている商標が本法の4条、10条、11条、12条、194の規定に違反している場合、または欺瞞的な手段若しくはその他の不正な手段で登録を得た場合は、商標局は当該登録商標の無効宣告を行う。その他の団体または個人は、商標評審委員会に当該登録商標の無効宣告を請求することができる。

商標局が登録商標の無効宣告を決定したときは、書面で当事者に通知しなければならない。当事者が商標局の決定に不服があるときは、通知を受領した日から15日以内に、商標評審委員会に復審を請求することができる。商標評審委員会は請求を受領した日から9ヶ月以内に決定を行い、書面で当事者に通知しなければならない。特別な事情があり延長が必要なときは、国務院工商行政管理部門の許可を得て、3ヶ月間延長することができる。当事者が商標評審委員会の決定に不服があるときは、通知を受領した日から30日以内に裁判所に訴えを提起することができる。

その他の団体または個人商標評審委員会に登録商標の無効宣告を請求するときは、商標評審委員会は請求を受領した後に書面で関係当事者に通知し、期間を定めて答弁の提出を要求しなければならない。商標評審委員会は請求を受領した日から9ヶ月以内に、登録商標の維持または登録商標の無効を宣告する裁定を下し、書面で当事者に通知しなければならない。特別な事情があり、延長が必要なときは、国務院工商行政管理部門の許可を得て、3ヶ月間延長することができる。当事者が商標評審委員会の裁定に不服があるときは、通知を受領した日から30日以内に裁判所に訴えを提起することができる。裁判所は商標裁定手続の相手方当事者に対し、第三者としての訴訟参加を通知しなければならない。

意見募集稿 44条【絶対的理由による無効宣告】

登録された商標が本法の15条、16条、17条、21条、221項および2項、26条の規定に違反した場合、国務院の知的財産権行政部門は当該登録商標の無効宣告を行う。

国務院の知的財産権行政部門が登録商標の無効宣告を決定したときは、書面で当事者に通知しなければならない。当事者に不服があるときは、通知を受領した日から15日以内に復審請求をすることができる。国務院の知的財産権行政部門は請求を受領した日から9ヶ月以内に決定を行い、書面で当事者に通知しなければならない。特別な事情があり延長が必要なときは、許可を得て3ヶ月間延長することができる。当事者が復審の決定に不服があるときは、通知を受領した日から30日以内に裁判所に訴えを提起することができる。

本条1項に掲げる事情がある場合、その他の自然人、法人または非法人組織国務院の知的財産権行政部門に当該登録商標の無効宣告を請求することができる。国務院の知的財産権行政部は請求受領後に書面で関係当事者に通知し、期間を定めて答弁の提出を要求しなければならない。国務院の知的財産権行政部門は復審請求受領日から9ヶ月以内に、登録商標の維持または登録商標の無効を宣告する裁定を下し、書面で当事者に通知しなければならない。特別な事情があり延長することが必要なときは、許可を得て3ヶ月間延長することができる。当事者が国務院の知的財産権行政部門の裁定に不服があるときは、通知を受領した日から30日以内に裁判所に訴えを提起することができる。裁判所は商標裁定手続の相手方当事者に対し、第三者としての訴訟参加を通知しなければならない。

コメント⑬ 45条【相対的理由による無効宣告および商標移転

「商標移転」手続きを異議申立てや商標出願の段階にも導入することを検討するよう請求した。

理由 冒認登録問題を解決しようとする場合、商標権の取戻しに時間がかかり、費用が高いなどの支障がある。この制度はこれらの問題に配慮している。

このような制度は無効審判だけではなく、異議申立て・冒認商標による拒絶査定に対する不服審判の手続きにも導入されるべきである。

現行規定 45【相対的理由による無効宣告】

すでに登録されている商標が本法の132項および3項、15条、161項、30条、31条、32の規定に違反した場合、先行権利者または利害関係者は商標の登録日から5年以内に、商標評審委員会に当該登録商標の無効宣告請求をすることができる。不正目的による登録であるときは、馳名商標の保有者は5年間の期間制限を受けない。

商標評審委員会は登録商標の無効宣告請求受領後、書面で関係当事者に通知し、期間を定めて答弁書の提出を要求しなければならない。商標評審委員会は、請求を受領した日から12ヶ月以内に登録商標の維持または登録商標の無効を宣告する裁定を下し、書面で当事者に通知しなければならない。特別な事情があり延長が必要なときは、国務院工商行政管理部門の許可を得て、6ヶ月間延長することができる。当事者が商標評審委員会の裁定に不服があるときは、通知を受領した日から30日以内に裁判所に訴えを提起することができる。裁判所は商標裁定手続の相手方当事者に対し、第三者としての訴訟参加を通知しなければならない。

意見募集稿 45条【相対的理由による無効宣告および商標移転

既に登録されている商標が本法の18条、19条、201項、23条、24条、25の規定に違反した場合、先行権利者または利害関係者は商標の登録日から5年以内に、国務院の知的財産権行政部門に当該登録商標の無効宣告請求をすることができる。本法の18条、19条の規定に違反し、または本法の23条の規定に違反し、他人がすでに使用し一定の影響力を有している商標を不正な手段で抜け駆け登録した場合、先行権利者は当該登録商標の自らへの移転を請求することができる。不正目的による登録であるときは、馳名商標の保所有者は5年間の期間制限を受けない。

国務院の知的財産権行政部門は登録商標の無効宣告請求または登録商標の移転の請求を受領した後、書面で関係当事者に通知し、期間を定めて答弁書の提出を要求しなければならない。国務院の知的財産権行政部門は請求を受領した日から12ヶ月以内に登録商標の維持登録商標の移転または登録商標の無効を宣告する裁定を下し、書面で当事者に通知しなければならない。特別な事情があり延長が必要なときは、許可を得て6ヶ月間延長することができる。当事者が国務院の知的財産権行政部門の裁定に不服があるときは、通知を受領した日から30日以内に裁判所に訴えを提起することができる。裁判所は商標裁定手続の相手方当事者に対し、第三者としての訴訟参加を通知しなければならない。

コメント⑭ 51条【取消復審】

復審を請求する期限を「15日」から「30日」に延長する。

理由 15日間は短すぎる。とくに連休を挟んでいる場合、海外の権利者に連絡・検討・判断する時間を十分に与えられない。
現行規定 54【取消復審】

登録商標を取り消すまたは登録商標を取り消さないという商標局の決定に対し当事者に不服があるときは、通知を受領した日から15日以内に商標評審委員会に復審請求をすることができる。商標評審委員会は請求を受領した日から9ヶ月以内に決定を行い、書面で請求人に通知しなければならない。特別な事情があり延長が必要なときは、国務院工商行政管理部門の許可を得て3ヶ月間延長することができる。当事者が商標評審委員会の決定に不服があるときは、通知を受領した日から30日以内に裁判所に訴絵を提起することができる。

意見募集稿 51条【取消復審】

登録商標を取り消すまたは登録商標を取り消さないという国務院の知的財産権行政部門の決定に対し当事者に不服があるときは、通知を受領した日から15日以内に国務院の知的財産権行政部門に復審請求をすることができる。国務院の知的財産権行政部門は請求を受領した日から9ヶ月以内に決定を行い、書面で請求人に通知しなければならない。特別な事情があり延長が必要なときは、許可を得て3ヶ月間延長することができる。当事者が復審の決定に不服のときは、通知を受領した日から30日以内に裁判所に訴えを提起することができる。

コメント⑮ 61条【商標の使用状況の説明】

本条を削除

理由 ⒈  「三年連続不使用取消」制度と抵触している。

⒉  すでに登録されている商標が4千万件以上もある。権利者・行政機関各部門への負担がおおき過ぎる。

⒊  ランキング審査または地方知識産権管理部門による審査が行われる場合、審査実施の公平性が保障できない虞れがある。

⒋  著名な商標または馳名商標の防御出願に代替できる制度が構築できていない。防御出願・登録商標が使用状況の説明を提出できないことにより取消された場合、冒認商標への対策が講じられない。

現行規定 (新規追加)
意見募集稿 61条【商標の使用状況の説明】

商標登録人は商標登録が認められた日から5年毎に、12ヶ月以内に国務院の知的財産権行政部門に指定商品における当該商標の使用状況または不使用の正当な理由を説明しなければならない商標登録人は上記期限内に複数の商標の使用状況についてまとめて説明することができる。

期間が満了しても説明をしない場合、国務院の知的財産権行政部門は商標登録人に通知する。商標登録人が通知を受領した日から6ヶ月以内に依然として説明をしない場合、当該登録商標を放棄したものとみなし、国務院の知的財産権行政部門は、当該登録商標を抹消する。

コメント⑯ 69条【商標代理機構の義務】

「本法の22条」を「本法の22条第(一)(二)(三)項」に限定する。

理由 代理機構の審査義務が重すぎる。調査費用の追加により出願代理費用がおおきくなる。出願人に無駄な金銭的負担をかける。
現行規定 191項ないし3

商標代理機構は誠実信用の原則に従い、法律・行政法規を遵守し、被代理人の委託に基づいて商標登録出願またはその他の商標関連事項を取り扱わなければならない。代理の過程において知り得た被代理人の営業秘密については守秘義務を負う。

委託者の出願商標について、本法に規定される不登録事由が存在する可能性があるとき、商標代理機構は委託者に告知しなければならない。

商標代理機構は、委託者の出願・登録商標が本法の4条、15条および32に規定する事由に該当することを知っているとき、または知るべきであるときは、その委託を受けてはならない。

意見募集稿 69条【商標代理機構の義務】

商標代理機構は誠実信用の原則に従い、法律・行政法規を遵守し、被代理人の委託に基づいて商標登録出願またはその他の商標関連事項を取り扱わなければならない。代理の過程において知り得た被代理人の営業秘密については守秘義務を負う。

委託者の出願商標について本法に規定される不登録事由が存在する可能性があるときは、商標代理機構は委託者に告知しなければならない。

商標代理機構は委託者の出願・登録商標が本法の22に規定する事由に該当することを知っているとき、または知るべきであるときは、その委託を受けてはならない。

商標代理従事者は法律を遵守し、信用度が高く、人格が高潔で、商標法令に精通し、法律に従って商標代理業務を行う能力を有する者でなければならない。商標代理従事者は同時に2つ以上の商標代理機構で商標代理業務に従事してはならない。

コメント⑰ 74条【商標権侵害紛争の処理】

模倣品の販売者に対し、供給者情報の提供を義務化する。

「登録商標権侵害商品であることを知らずに販売し、当該商品を合法的に取得したことを証明でき、かつ提供者について真実かつ有効に説明できるときは、商標法執行を担当する部門は販売の停止を命じ、侵害商品を没収し、案件を侵害商品供給者所在地の法律執行部門に通報して処理させなければならない。」に改正する。

理由 模倣品対策の実務において、模倣品の販売者は知らないと抗弁し、虚偽の供給者情報を伝えることがよくある。

こうした場合、模倣品の製造者を突き止めることができず、販売者にも責任を追及しない結果になる。

現行規定 60【商標権侵害紛争の処理】

本法の57に定める登録商標権を侵害する行為のいずれかがあり、紛争が生じたときは、当事者の協議により解決する。協議する意向がないとき、または協議が成立しないときは、商標登録者または利害関係者は裁判所に訴えを提起することも、工商行政管理部門に処理を請求することもできる。

工商行政管理部門の処理を経て権利侵害行為の成立が認定されたときは、ただちに侵害行為の停止を命じ、権利侵害商品および権利侵害商品の製造、登録商標の標章の偽造に主に用いる器具を没収、廃棄し、違法経営額が5万元以上であるときは、違法経営額の5倍以下の罰金を科すことができ、違法経営額がないときまたは5万元未満であるときは、25万元以下の罰金を科すことができる。5年以内に商標権侵害行為を2回以上行っているとき、またはその他重大な情状を有するときは、重罰に処さなければならない。登録商標権侵害商品であることを知らずに販売し、当該商品を合法的に取得したことを証明でき、かつ供給者について説明できるときは、工商行政管理部門は販売の停止を命じる。

商標権侵害の賠償額に関する争議において当事者は、処理を行う工商行政管理部門に調停を請求することも、中華人民共和国行政訴訟法により裁判所に訴えを提起することもできる。工商行政管理部門の調停を経ても当事者が合意に達しないとき、または調停書の効力が生じた後に履行されないときは、当事者は、中華人民共和国民事訴訟法により裁判所に訴えを提起することができる。

意見募集稿 74条【商標権侵害紛争の処理】

本法の72に定める登録商標権を侵害する行為のいずれかがあり、紛争が生じたときは、当事者の協議により解決する。当事者が合意した書面の仲裁協議に基づき、仲裁機関に仲裁を申請することもできる。協議する意向がないとき、協議が成立しないときまたは書面の仲裁協議がなときは商標登録者または利害関係者は裁判所に訴えを提起することも、商標法執行を担当する部門に処理を請求することもできる。

商標法執行を担当する部門の処理を経て権利侵害行為の成立が認定されたときは、ただちに侵害行為の停止を命じ、権利侵害商品およびおもに権利侵害商品の製造、登録商標の標章の偽造に用いる器具を没収、廃棄し、違法所得を没収し違法経営額が5万元以上であるときは、違法経営額の5倍以下の罰金を科すことができ、違法経営額がないときまたは5万元未満であるときは、25万元以下の罰金を科すことができる。登録商標権侵害商品であることを知らずに販売し、当該商品を合法的に取得したことを証明でき、かつ供給者について説明できるときは、法律執行部門は販売の停止を命じ、侵害商品を没収し、案件を侵害商品供給者所在地の法律執行部門に通報して処理させることができる。

5年以内に2回以上の商標権侵害行為もししくはその他の商標法違反を行っており、法執行を拒否妨害し、またはその他の深刻な情状あった場合、商標法執行を担当する部門は厳重に処罰しなければならない。

商標権侵害行為が成立するか否か、または賠償額に異議がある場合、当事者は知的財産権管理部門に対して行政裁決または調停を請求することができ、中華人民共和国民事訴訟法に基づいて裁判所に訴えを提起することもできる。知的財産権管理部門の調停を経て合意に達した場合裁判所は司法確認を行うことができ合意に達していない場合には、知的財産権管理部門は侵害行為が成立するか否かについて行政裁決を下すことができる当事者が行政裁決を不服とする場合、中華人民共和国行政訴訟法に従って裁判所に訴えを提起

することができる。

関連当事者と商標登録人または利害関係者との間で登録商標権についての紛争が生じた場合、裁判所に訴えを提起し、その行為が登録商標権を侵害しているか否かについて判決を求めることができる。

 

上海博邦知識産権服務有限公司
パートナー
弁護士 銭旻