はじめに

現在、ネットでの模倣品販売は珍しいことではない。権利者の多くはネットショップの情報から運営者の所在を突き止め、AICなどの執行部門に査察を要求してきた。執行部門は一般的に、そこで発見された模倣品の数量にもとづき処罰を下す。
しかし、多くの場合、ネットショップで販売された模倣品の数量は、運営者がその所在地で在庫として保有しているものをはるかに上まわる。仮にそれら数量も処罰対象に含めることができるのであれば、模倣品販売業者に与える損害も増加することになる。
では、AICなどの執行部門はネットショップでの模倣品販売数量を処罰対象としているのであろうか。残念ながら、当社がこれまで取り扱ってきた案件では、 以下の事情で処罰対象としない場合がほとんどである。すなわち、ネットショップで販売された製品の真贋が確認できないことや、販売数量データの正確性およ び、そこに示されている販売価格が正しいものであるかどうかが検証しにくいことなどである。
このなかでもっとも難しいのは、販売された製品の真贋判断である。場合によっては、執行部門が購入者に連絡をとり、調査や証拠収集する。しかし、それは難易度が高く、時間も手間もかかる。
ところが、当社の尽力により、ネットショップでの販売実績を処罰対象に入れることに成功した事例がある。以下、その紹介をしたい。

一.事案の概要
AICはこの数量を在庫数に加えたうえで違法経営額を算出し、罰金1万元の支払いを命じるとともに、模倣品を没収した。同時に、ネットショップの模倣品情報削除命令も下されている。

二.ネットショップでの販売数量が処罰対象となった事情

AICがネットショップでの販売数量を違法経営額に加え、処罰を下した理由につき、当社の見解は以下のとおりである。
まず、当社はネット情報の収集を心がけ、侵害者のネットショップにおける侵害品関連情報を把握した。
つぎに、当社は申立書に侵害URLの内容(販売数量含む)を添付した。すなわち、侵害者によるネットでの模倣品販売行為を強調し、そこでの販売数量を含んだ処罰および、侵害者に侵害URLを削除させることを要求。
そして、摘発段階では侵害品2670点を押収した。侵害者はネットショップでの模倣品販売を自白。権利者の要求に応じ、AICは現場で侵害者にネットショップの模倣品販売URLを削除するよう命じた。
最後に、当社法務スタッフが本件を定期的に追跡し、押収された模倣品およびネットショップの販売データに基づく処罰をAICに働きかけている。
以上の活動が今回の処置につながったと考える。

三.おわりに
ネットショップの模倣品販売データに基づく処罰を執行部門に下させるためには、権利者またはその代理人がそのような処罰を前提に、案件の調査、摘発、そして摘発後の追跡を進める必要がある。
なお、今回は侵害者がネットでの侵害品販売を自白したことも、その販売データが処罰対象となった要因のひとつである。
本件は某日系企業が取り扱っている筆記具の模倣品(商標権侵害)に関するものである。
鄭州市に在住する侵害者はアリババのネットショップを経営している。ネットショップは自宅で運営され、模倣品の在庫もそこにある。
権利者が鄭州市のAICに取締りを申立て、本年5月14日に査察が実施された。侵害者の自宅で押収された模倣品在庫の数量は2670点である。また、本件の場合はネットショップでの販売数量データが見つかっており、それによると、2782点が販売されたことになっている。

上海博邦知識産権服務有限公司
模倣対策事業部顧客部 兪曄華
2014年11月04日